【モバマス】水曜日の午後には、温かいお茶を淹れて
↓ 1- 覧 板 20
7: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/04(火) 21:49:12.74 ID:gOTfw+RA0
「おーい☆」
はぁとさんがびしーっ、と右手の甲をプロデューサーさんに向ける。ツッコミかな?
「プロデューサーに言ってもしゃーねーかもしんないけど、それ、あたしたちがやる仕事じゃなくね?」
「……確かに、意図が読めないわね。肉体労働が嫌だというわけではないけど、ここもプロダクションの敷地内。整備は総務部の業務だと思うわ。備品管理にも関わることよ」
マキノさんは冷静にプロデューサーさんに問う。
プロデューサーさんは穏やかに微笑んで、立ち上がった。
「皆さんもおき聞になったと思いますが、いま、社内は大変混乱しています。非常事態ではありますが、総務が正規のプロデューサールームを整えるのを悠長に待っていられるほど、のんびりした業界でもないことは皆さんもご存じのはず。であれば、私たちができることをすれば、一歩先んじることができます。もちろん、これは独断ではなく、総務や経理も了解していることです」
「……なるほど」
マキノさんは頷く。でも、その目は真意を探るみたいにプロデューサーさんを見てた。
またすこし場の雰囲気が固くなってきたのを感じて、私は口に含んでいたお茶を飲みこんで、椅子から立ち上がった。
「あのっ! 私、手伝います! みんなも、いろいろばたばたしちゃったけど、プロデューサーさんの言うとおり、今はこのお部屋の準備をして、身体を動かしたほうがすっきりすると思うなっ!」
「私も、手伝います!」
美穂ちゃんも立ち上がる。
「ふむ。よろしいですか?」
プロデューサーさんははぁとさんの方を見る。はぁとさんははぁーっと長い息をついて、立ち上がった。
「……しゃーねーな、やるか☆」
マキノちゃんも立ち上がった。
「それでは、まずはダンボールを長机の上に置いて。中に事務用品とリストが入っているはずです。数に間違いがないかを確認してください」
私は美穂ちゃんと二人でダンボールを持ちあげる。
「佐藤さんは、こちらによろしいですかな」
「やぁん、プロデューサー、はぁとって呼んで☆」
プロデューサーさんは一瞬沈黙する。
こんなときでもキャラクターを貫き通せるはぁとさんはすごいなぁ。
「……佐藤さん、お願いできますか」
「……はぁーい」
もう一度『佐藤さん』と呼ばれ、はぁとさんは素直にプロデューサーに従った。
「ここに座り、このノートPCをセッティングしていただきたい。わかりますかな?」
「……そりゃ衣装の型紙を作ったりもするから、ふつーに使うくらいなら……」
はぁとさんは椅子に座ると、ノートPCを開いて電源を入れた。
「すいません、旧い人間なもので、新しい機械は不得意でしてね」
「今日びパソなんか新しい機械とはいえねーぞ。ま、しゃーねーなー☆」
「みなさん」プロデューサーさんは部屋の端に立って、みんなに声をかけた。「ここはこれから、打ち合わせなどで日常的に使うこととなります。置かれた机なども含めて、皆さんの使いやすいように配置をしていただいて構いません。そうですね……相葉さん」
「はいっ!」
「相葉さんをリーダーに、この部屋を事務所にするための模様替えをしていただきたい。自由に配置していただいて構いません。お願いできますかな?」
「えっ、いいんですか!?」
「ええ。重たいものを動かすときは気を付けて、協力して行ってください」
「えっと……」私は部屋を見渡して、家具の配置を考えてみた。「うん、やってみます!」
「よろしくおねがいします」プロデューサーさんはにっこり微笑んでから、何かに気づいたような顔をした。「ああ、でも……できれば、そこの茶箪笥だけは、そのままに……」
すこし申し訳なさそうな顔をしてプロデューサーさんが行ったので、私は思わずちょっと吹きだしちゃった。
「はいっ!」
「あ、はぁとは? って、まだパソのセッティング終わってねーけど」
「佐藤さんは、そのまま続けてください。……ふむ、佐藤さん」プロデューサーさんは、真面目な目ではぁとさんを見た。「背筋が曲がっています。姿勢を」
「っ……」
はぁとさんはなにか言いたそうだったけれど、黙って姿勢を正した。
61Res/162.03 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20