1:名無しNIPPER[saga]
2018/11/27(火) 16:29:23.43 ID:5wn76uGGO
早朝。提督は鎮守府の見回りを行っていた。
管理者として自分の目で鎮守府の状況を確認する必要があるのだ。けれど、それはほとんど気楽な散歩のようなものであった。
港の方に出ると冬の潮風が提督を凍えさせる。提督は制服の襟を首に巻き付けるようにして散策を始めた。
特に代わり映えもしない景色を眺めながら歩いていると、鎮守府の港を囲うように切り立った岩の崖壁と海の合間に人ひとり通れそうな横道があることに気付いた。
港の主な設備から離れ、鎮守府の端も端、人工的な領域と自然的な領域が混じった曖昧な場所であった。恐らく艦娘も知らない道であろう。
「これはもしかしたら敵の侵入経路に使われるかもしれん。安全を確認せねば」とは言ったものの、内心は少年的な冒険心が主であった。
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2:名無しNIPPER
2018/11/27(火) 16:32:43.89 ID:5RohFdgU0
濡れた岩と砂に注意しながら崖壁を海沿いに進むと、小さな空間がひらけていた。そこから遠くに水平線が見え、足元では静かに波が揺れている。
思わぬ秘境の景色に喜びを感じるのも束の間、寒さで提督はぶるぶる震えた。いかに静かな波風であっても、季節の風であることに変わりはなかった。
引き返そうと足の向きを変えた時、提督は波際に揺れる小瓶を見つける。指先が冷たいのを我慢して拾い上げる。中には紙が丸められて入っていた。
3:名無しNIPPER[sage]
2018/11/27(火) 16:34:22.85 ID:5RohFdgU0
普段から曙は話を続けていくと語調の強さが上がっていきがちな娘であったが、特に今日は少し機嫌が悪いのかもしれないと提督は思った。
「で、どうするのよ? それ」「ああ。返事でも書こうかと」「はあ?」。曙は信じられないとでもいう表情をした。「バカなの? あんた? 名も知れない相手に?」「こうして届いたってことはこちらからも瓶詰めした手紙を返せば届く道理だろう?」
「ほんと、相手も相手なら、提督も提督ね」「なんだって?」「クソ提督の道楽には付き合いきれないって言ったのよ!」。そのまま曙は執務室のドアを強く閉め出て行った。
4:名無しNIPPER
2018/11/27(火) 16:36:08.63 ID:5RohFdgU0
翌日の早朝、曙が部屋に帰るとルームメイトの潮がいなかった。どこに行ったのか考えていると後ろからドアの開く音。「あ、曙ちゃん。入れ違いになっちゃったみたい」
「ちょっと潮! どこに行ってたの、よ……?」「ええと、曙ちゃんを探しに……って曙ちゃん?」「……それはなに?」「これ? 波打ち際に流れ着いてたから持ってきちゃった」。
潮の手には手紙入りの瓶が収まっていた。「それ中はもう見たの?」「うん! 宝の地図かと思ったんだけど、違って、情熱的な恋文だったよ! 曙ちゃんも見る?」「私は、いいわよ」「……そういや曙ちゃんはこういうの確か嫌いだったっけ?」
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