37: ◆K3Kbcj/nTY[saga]
2018/08/31(金) 21:44:55.23 ID:fSt5IFCp0
「他の誰でもない、岡部の言葉でそれを聞けたから、じゃあ着てやるか、って思ったの。店だと恥ずかしくて駄目だったけど、岡部だけになら……って、意外と単純ね、私」
「複雑であるよりかはよほどいい。対人関係においてはな」
「その言葉、色んな人に聞かせてやりたいわね」
色々な物事を隠しながら生きている人間ばかりの世の中では疲れてしまう。
他のラボメンもそうだし、紅莉栖もそうだ。
ならば、ここだけはそれを排した場所にしようと、今の俺はそう思っている。
「まあ、そういうこと。あんたの疑問は解決した?」
「ああ」
話している時間は僅かであったように感じたが、実際は違ったらしい。
外は一層暗がりに沈みつつあり、点いているラボの蛍光灯が独特の雰囲気を醸し出していた。
「紅莉栖」
「何?」
名前を呼ぶと、優しい声で聞き返してくる。
たったそれだけで、例えようもない幸福感と高揚感が溢れてくるのだ。
「今日はありがとう。紅莉栖のメイド服が見れてよかった……って、これじゃ本当にHENTAIじゃないか」
「ふふ、本当にね。……でも、それは悪い気がしない」
突然紅莉栖がソファから起き上がり、テーブル越しの俺の対面に立った。
「褒めてるんでしょ? なら許すっ」
腰に手を当て、自信に満ちた表情で微笑む。
それが、絶対にありえないα世界線の紅莉栖との邂逅のように思えて。
やはりα世界線でもβ世界線でも、シュタインズ・ゲートでも紅莉栖は紅莉栖なのだと思えて。
ここが、深淵の果てで望んだ世界線なのだと改めて感じて――。
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