智絵里「うさぎさんにチョップしたらタイムスリップしてしまいました」
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19: ◆vNoifR2vNc[saga]
2018/08/15(水) 12:27:54.86 ID:2c4OR7u90


P「智絵里……いや、50年くらい前の智絵里……か。顔を見せてくれないか」


プロデューサーさんの優しい声を聞いて、わたしははっとして顔を上げます。


智絵里「あ……っ、P、さん……?どうして、それを……」

P「智絵里の言葉で思い出したよ。あいつが、未来の俺に会ったことがあるって言ってたこと」

智絵里「あ……あの、わたし……だましたりして、ごめんなさい」

P「いや、いいんだ、智絵里……俺のためにしてくれたことなんだろう?おかげで随分と心も軽くなった。未練もなくなるくらいにな」


……どうやらわたしは、話すのに必死で、演じることを忘れていたみたいです。

でも、そう言って柔らかく微笑んだプロデューサーさんの顔は、つきものが落ちたように晴れやかでした。


P「俺も、最後の最後に自分の想いを吐き出すことができた。つらい役目を背負ってくれて、ありがとう……智絵里」

智絵里「そんな……わたしは、手紙に書いてあることに従っただけで」

P「そうか……。やっぱり、あいつは全部お見通しだったのかもしれないな……」


わたしはかぶりを振って手紙を取り出して見せましたが、プロデューサーさんはそれを読もうとはしませんでした。


P「さて……いいかい、智絵里。今から話すことは……俺の、最後のプロデュースだ。よく聞いてほしい」

智絵里「……はい。プロデューサー……さん」


かわりに、プロデューサーさんは、まっすぐこちらを見て語りかけてきました。

わたしは、また目が熱くなるのをこらえながらうなずきます。


P「智絵里は、いま……何もしないこともできたのに、逃げずに、受け止めようとした……それは智絵里の心の強さなんだよ」

智絵里「わたしの、つよさ……」

P「智絵里は、強くなりたいとずっと言っていたね。それはもう、智絵里の中にあるものだ」

智絵里「……そう、でしょうか」

P「ああ。だけど……絶対に、無理をするな。俺を頼って、甘えてもいい、何でも言ってみてくれ。そうして不安を乗り越えた先でこぼれる最高の笑顔こそが、智絵里の最大の武器だ。その武器で俺を……つなぎとめていてほしい。……わかったな?」


彼の最後のプロデュース……それは、彼の悔恨と願いとが溶け合った "指導" でした。


智絵里「……はい、絶対に……約束、します。プロデューサーさん。ありがとうございました」


わたしは、深々と頭を下げました。……もう、これで最後になると感じたから。


P「こちらこそ。ありがとう、智絵里……。これで、やっと……」


最期に感謝を述べると、プロデューサーさんは目を閉じて……体から熱を失っていきました。



みんながすすり泣く声が、聞こえてきます。

わたしの頬を伝った涙が、足元にいたうさぎさんに触れて。

わたしの身体は、光に包まれました。

ふと横を見ると、美穂ちゃんだけが。

泣きながら笑って、手を振っています。

だからわたしも、最後に。

同じ泣き笑いで、手を振り返しました。




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