智絵里「うさぎさんにチョップしたらタイムスリップしてしまいました」
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◆vNoifR2vNc
[saga]
2018/08/15(水) 12:22:05.78 ID:2c4OR7u90
P「……愛里をみごもったおまえが、引退を決めて。愛里も無事に生まれて……幸せの絶頂だった時、俺はもっともっと幸せな家庭を作りたくて、いっそう仕事に打ち込んだ」
P「……だが、それは間違いだったんだろうな。……突然におまえがいなくなってから、ずっと心に穴が開いたようで……今日まで、後悔しない日なんて無かった」
智絵里「……はい。知っています」
……<わたし>の手紙を思い出します。
それほどまでに想われていたことに実感がわかずにいましたが、プロデューサーさんの言葉にこもった深い思いと悲しみを肌で感じて、それは本当だったんだと思えました。
P「お見通し、か……。もともと身体が強くなかったおまえは、良き妻良き母であろうとして無理を重ねていた……」
P「そんなことも知らずに、おまえの心の強さに甘えてしまって……おまえはいなくなった。それが俺の罪なんだ」
智絵里「そんな……こと」
ない、なんてどうして言えるんでしょう。わたしが、見てきたわけでもないのに。
プロデューサーさんは、力のない瞳でこちらを見ていました。
……まるで、断罪されたいと願うような。そんな視線でした。
智絵里「……でも、それは、自分で決めたことです……。決して、プロデューサーさんのせいじゃないです。わたしは……最後まで、ずっと幸せでしたから……!」
P「ああ……おまえは、最後にそう言っていたな……昨日のことのように思い出せるよ。ああ、わかっている。これが、独りよがりなエゴイズムだってことくらいは」
それは、手紙に書かれていたこと。わたしは、未来のわたしの代わりに告げなければなりませんでした。
でも、わたしの言葉を聞いても、プロデューサーさんは空虚な苦笑いを浮かべるばかりで。
P「それでも、俺は……もっとおまえに頼られたかった。弱さを、さらけ出してほしかった。何も言わずに倒れて、何も言わずに行ってしまった……弱音ひとつも、残さないまま」
P「そんなおまえに……結局俺は、何もしてやれなかった。……それが、すべてなんだよ」
悔恨のような、恨み言のようにも聞こえるその言葉は、わたしの心を深くえぐっていき。
ちがう、ちがう、待って。
そんな叫びがわたしの頭の中から聞こえるようで。頭は熱くなり、のどはからからになるようでした。
それでも、手紙を読んだとき、頭の中に焼き付いた未来の<わたし>の情景。
……それを頼りに、わたしはなんとか口を開きました。
智絵里「わた……しは。きっと、つよくなんてなかった……。最後まで、死ぬのが怖かったんだと思います」
智絵里「でも、それ以上に……みんなを残していって、みんなが悲しみを背負ってしまうことのほうが怖かった」
手紙についた一滴の染み――残した人を想って流した、その涙の意味を、告げるために。
智絵里「だから、最期まで笑っていたんだと思います。少しでもみんなの気持ちが軽くなるように。笑顔がひとを幸せにするって、そう信じたから」
智絵里「もしそれが間違いだったとするなら……だから、わたしはここに来たんです。未来のわたしはもういないけど……!プロデューサーさんに、代わりに伝えなくちゃいけないから……っ」
智絵里「ごめんなさい……勝手にいなくなって、ごめんなさい……っ」
わたしは、気づけば顔を両手で覆って、両目からぼろぼろと涙を流していました。
この世界の、プロデューサーさんと<わたし>の、どうにもならないすれ違い……その運命の、悲しさに。
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