智絵里「うさぎさんにチョップしたらタイムスリップしてしまいました」
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◆vNoifR2vNc
[saga]
2018/08/15(水) 12:10:14.69 ID:2c4OR7u90
智絵里「……えぇと、まずは、お礼が言いたいんです」
愛里「お礼……ですか?」
わたしの声に顔を上げた愛里さんの少しおどおどとした目線は、やっぱり美柑ちゃんやわたしによく似ていて。
わたしのお母さんも、こんな気持ちだったのかなぁなんて考えながら、わたしは話します。
智絵里「さっき、美柑ちゃんと話したんです。それで……わかりました。しっかり愛をもらって育ったんだろうなって」
愛里「そんな……私、美柑に寂しい思いをさせてばかりで……母親らしいことはしてあげられなくて……」
――なんとなく想像はつきます。美柑ちゃんも、子供のころの私にそっくりだったから。でも、違うところはあって。
わたしは、ずっと私の手を握ってくれていた美柑ちゃんの背中をぽんっと押しました。
智絵里「それは……どうかな?美柑ちゃん」
美柑「……えへへ。わたしね、さびしい時もあるけど、おかあさんのこと……だいすきだよ!」
美柑ちゃんは、愛里さんの服をくいくいと引っ張りながら笑いました。
それは、愛里さんが顔を曇らせたのとは裏腹の……屈託のない笑顔でした。
愛里「美柑……あなた……ほんとうに……?」
美柑「ほんとう、だよ。おかあさん、いつもやさしいから!」
智絵里「愛里さん、どうしてそう思うかは、わからないですけど……。美柑ちゃんの笑顔は、信じてあげてください……ね?」
美柑ちゃんの反応に驚いた表情になった愛里さんに、わたしはそう付け加えました。
――美柑ちゃんは、<わたし>に会ったことはないって言っていたから、きっと。
愛里さんにとって、頼れる母親がいないというのは、とても寂しいことだと思うから。
智絵里「……未来のわたしは、美柑ちゃんの顔は見られなかったんだと思うんです。だから……代わりに言わせてください。まっすぐ育ててくれてありがとう……って」
愛里「美柑……おかあ、さん……」
とうとう愛里さんは、ハンカチで顔を覆って泣き出してしまいました。
愛里「わたし……今まで、がんばったんです……っ。おかあさんにも、わたしと、美柑のこと、ずっと見せてあげたかったの……!!」
――未来の<わたし>は。美柑ちゃんが生まれる何年も前にいなくなっていたそうです。
わたしは、ずっと泣いている愛里さんの頭を撫でました。
智絵里「愛里さん……。よく、がんばったね……本当に、ありがとう」
――美柑ちゃんと、一緒に。
美柑「おかあさん……どこかいたい?だいじょうぶ?」
それは、愛里さん自身がしてきた、美柑ちゃんへの愛情表現と同じものでした。
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