50:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:09:51.26 ID:w6V3e5/y0
やっぱり。
きっと裕美ちゃんはあの約束を覚えていて、だから私に頼んだのだ。その気持ちは嬉しいけど、心の奥の不安はむしろ深まった。
「……お仕事は嬉しいですけど、進行役なんて、うまくできるんでしょうか」
そんな仕事、今までしたことがなかった。小さなイベントとはいえ進行役だ。
それに、裕美ちゃんもそんなに慣れているわけでもないはずだ。ただ約束を守るために、私の名を挙げたにすぎない。
関ちゃんプロデューサーだって、納得してやっている訳じゃないんじゃないか。
私の不安は、続くプロデューサーさんの言葉で肯定された。
「実をいえば、向こうは別の候補も決めてあるらしい。それでも、関裕美はお前と一緒にやりたいと言ったそうだ」
「裕美ちゃんが……」
「どうする、不安なら今から断ることもできるぞ」
「……プロデューサーさんは、どう思います」
「お前が決めることだ」
突き放すような言い方は、予想できていた。でも、続いて。
「ただ……関裕美のことを考えるならな」
プロデューサーさんは口を濁した。やはりそうだ。プロデューサーさんも、私と同じ想いを抱いている。
仕事は嬉しいが、私が引き受けることによって、イベントが失敗するかもしれないと。
司会には向き不向きがあるし、私は……自分でむいているとは思えなかった。
例えそうだとしても、私は彼の言葉を聞きたかった。
「考えるなら……なんですか」
僅かな沈黙の後だった。
「断った方がいいだろうな」
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