51:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:11:22.40 ID:w6V3e5/y0
自分で促していたのに、答えなんかわかっていたのに、それでも私は言葉を失ってしまった。
「小さいとはいえ彼女の初イベントだ。誰だって成功させたい。すでにもう、一つ躓いたって言えるんだ、成功する可能性は少しでも高めるのは間違ってない。ほたるにとっても、失敗はすれば痛手になる」
その通りだ。私にお仕事がないのは、私の悪評のせい。
このイベントに失敗すれば、それを強めることになるだろう。そうすれば、私のアイドル人生は。
でも、たとえそうだとしても。
「……頑張れとか、言ってくれないんですか。頑張れとか、お前なら出来るとか、そういうことは言ってくれないんですか」
私はそう漏らしてしまった。プロデューサーさんはいつもそうだった。どうして私を励ましてくれないんだろう。お互いに頑張っているのに、別々に頑張っているようで。
それが私は嫌だった。
慰めでもいい、背中を押してくれる優しい言葉をかけてほしかったのに。
「決めるのは、ほたる。お前だ」
彼の繰り返した言葉は、瞬時に心にまとわり、ゆっくりとしめつけてきた。
胸の痛みに強張った瞬間、私はプロデューサーと目があった。その瞳は、確かに私の心のうちを見通していた。
プロデューサーは、逃げるように視線を逸らした。
「まだ少し時間がある。一人で考えてみろ」
そういうと、プロデューサーさんは事務所を一度出ていった。
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