43:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:56:33.91 ID:S8sM1lda0
「不運なんて誰にでもある。仕事を取るのが俺の仕事だ。お前はレッスンに励んでいてくれ」
それは励ましているようにも、突き放しているようにも聞こえた。
「だから、そう……まかせろ。さあ、そこをどいて。仕事をしなきゃいけないからな」
そういいながら、プロデューサーさんは私の傍に来る。
私がゆっくりと退くと、プロデューサーは椅子に座って、閉じられたパソコンを開いて。
また顔をしかめた。見ると、パソコン画面に綺麗なヒビが入っていた。
私が思いっきり閉めてしまったせいだ。
「ご……ごめんなさい……!!」
「いや、いいんだ。どうせ支給品だ。また貰うよ。それよりこの後はボイスレッスンだろ。遅刻するぞ」
「……はい」プロデューサーさんの言葉に従うのが、それが今の私に出来る精一杯の仕事、ということだった。
肩を落としながら、私は部屋を出ていこうとして。
「ほたる」
呼び止められて振り返ると、プロデューサーの瞳が私を捉えていた。黙り込んだまま、私を見ていたけど。
「お前は、アイドルなんだ。アイドルになれたんだ。それでも不幸っていうのか」
「それは……不幸じゃないです」
「そうだろ。アイドルになれたんだ。こういう噂も、自分たちの不注意や準備不足を、お前に押し付けてるだけだ。だから」
プロデューサーは言葉を戸切り、また私をじっと見つめていた。私は息が詰まりそうに思えるほど長くも思感じたし、瞬きほどに短くも感じた瞬間。
プロデューサーさんは視線を、パソコンに向けた。大きくヒビが入って、なにも映らないはずのモニターに。
「だからレッスンに励むんだ。仕事はなんとかする」
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