白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」
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40:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 23:52:41.75 ID:S8sM1lda0

 もしかしたら、と別の不安も胸の内にあった。

 もしかしたらプロデューサーさんは、やっぱり私なんかのプロデュースをしたくなくて、だから手を抜いているんじゃないか。


 そんなはずはないと思う。でも、私の運のなさは自分が一番に自覚していた。

 そういうプロデューサーに当たってしまうのも、運の悪さなんじゃないか。

 グッと胸元に手を当てながら、私はプロデューサー室にむかった。

 彼のプロデューサー室は、私が見てきたなかでもっとも素っ気のないプロデューサー室だった。

 今までのプロデューサーの部屋は――そんな部屋を持たない人もいたが、机はみんな持っていた――なんというか、その人の個性が出るものだった。

 格言を掲げている人もいたし、奇妙な顔が彫刻されたペン立てを使う人もいた。

 家族や友達、アイドルたちとの写真を飾ったり、どこかで使っている人らしさがでてくるものだ。

 でも、プロデューサーさんの部屋は、そういう個性がなかった。

 会社から与えられた備品を使って、会社から与えられたままで使っているようだった。

 明日から突然来なくなっても、そのまま引き継げるような。寂しさを感じる部屋だった。



 プロデューサーさんは居なかったが、ノートパソコンは机の上に乗っていた。

 それも会社から支給されたもの。パソコンは立ち上がったまま。ちょっと席を外しているのだろう。


(お仕事をしてたんだよね)


 となれば当然、パソコン画面には仕事に関するなにかが表示されているはずだ。


(……私の為の、仕事)


 プロデューサーさんは、ちゃんと仕事をしてくれているだろうか。その不安が胸の内に膨らんだ。


(少し見るぐらいなら……)


 いいことではないのだけれど、不用心なプロデューサーさんが悪いのだ。

 私は机の反対に回り、画面を覗き込んだ。

 メールの確認をしていたらしい。起動されたソフトには、メールの文面が乗っていた。



 メールを見ていくうちに、私は背筋が冷たくなっていった。




 全てが、断りのメールだった。








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