53: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:22:44.99 ID:TQ5drJ1c0
「うう……すまない」
「まぁ俺もよく寝坊するので。気にしなくて良いよ」
朝霞台。新松戸。
54: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:24:36.33 ID:TQ5drJ1c0
水戸駅。鹿島臨海鉄道大洗鹿島線。
3分ほどで切符を購入できた(手売りだった)ので「全然待たなかったなあ」と言うと、「そうか?」とアンチョビは不思議そうな表情を浮かべた。
今日のアンチョビは黒縁の眼鏡と深めの帽子で顔を隠しており、新鮮で可愛らしい。
55: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:27:24.80 ID:TQ5drJ1c0
マリンタワーへの大通りにはあんこう祭りののぼりが並び、歩行者天国はすでに通行が困難なほどの賑わいを見せている。
わいのわいのとはしゃぎながらマリンタワー前へ向かうと、ステージの方角からはヒーローショーのお姉さんの声が届いた。
まいわい市場が見えてふいに物販列に並ぼうかとも思ったのだが、列の長さが恐ろしいことになっているようだしアンチョビもいるので、諦めてそのまま広場へ。
密集した人・人・人。そして漂う屋台の香りと白くたちこめる煙に気持ちが昂ぶる。
56: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:30:00.21 ID:TQ5drJ1c0
「……ガルパンキャストの出演するステージって、何時からだっけ」
「11時半から――20分後だな。戸庭はここで休んでて大丈夫だぞ。仕事の疲れもあるだろうし、付き合わせるのも悪いからな。私一人で行ってくる」
言われて気付いた。
57: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:33:43.88 ID:TQ5drJ1c0
アンチョビが去ると、祭りの喧噪の中でふいに俺の周りだけ音が消えたような気がして、妙に寂しかった。
ぼうっと宙を見上げると空は快晴で、『いい一日』っていうのはこういう日のことをいうのだなと何となく思った。
アルミ製のベンチに座って、屋台でやきそばを焼くおっさんやらビールを手に談笑するおっさんやらを眺めていると、ステージを中心とした人だかりが大きくなってきたのに気付く。
もはやベンチに座っているのもままならず、後方に下がると、マリンタワーの裏から、ステージ右手へと向かった。
58: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:36:11.98 ID:TQ5drJ1c0
やがてステージが始まった。
まずバンビジュの宣伝担当が司会進行役として現れ、その後にあんこうチームの声優陣が登壇する。
「みなさんこんにちはー」「みなさんと楽しい時間が過ごすことができて嬉しいです」
「毎年毎年すごいですね」「お元気そうでなによりです」「みなさんおはようございまーす」
59: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:40:44.80 ID:TQ5drJ1c0
「こっちこっち」
手を振ると、顔を上げた彼女がこちらに気付く。
ひらひらと彼女も手を振って応じた。
60: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:43:33.34 ID:TQ5drJ1c0
横目に広場の方をうかがうと、ステージが終わったからか先程の人混みは消えていた。
太陽はいまだ頭上で燦々と輝いている。
「さあ、今日はもうぱーっとあんこう祭りを楽しもー!」
61: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:45:43.35 ID:TQ5drJ1c0
2017年11月20日。月曜日。
あんこう祭り翌日。
非日常にどっぷり浸かって緩んだ脳みそが、一瞬で現実に引き戻される。
束の間の休憩すら許されぬ怒濤の作業量、気付けば時刻は夜中の23時となっていた。
62: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:48:35.03 ID:TQ5drJ1c0
2017年11月22日。水曜日。
仕事量は増える一方だ。
リリースに向けて少しずつ仕事は減っていくはずが、何故増えるのか。謎だ。
63: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/16(月) 20:51:43.29 ID:TQ5drJ1c0
「あ、あぁ、その話か。でも戸庭も疲れてるだろ? 話すのは明日にしよう。明日は仕事も休みだしな!」
「……休み? いや、何故に?」
「明日は祝日だろ?」
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