6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 15:51:32.66 ID:LgMjPCNT0
だけど私は、すぐに自らの実力不足を痛感する羽目になってしまう。
受けるオーディションの結果は連戦連敗。
元々容姿に自信があるワケでも、特別ダンスや歌が得意でもない。
まして受験勉強なんかとは違って
合格の為のハッキリした対策だって無い世界だ。
人に自慢のできる取り柄も無い、武器となる一芸も持たない私にとって唯一の物と言っていい、
アピールポイントとして毎回のように口にしていた「やる気がある」という言葉が、
実のところは追い詰められ、後にも引けなくなったカラ元気を撒き散らしてる姿だったと気づいたのは、
恥ずかしいな、765の面接官だったプロデューサーに拾われた後の世間話。
「君を合格にしようと思わされた、その元気がカラ元気だったとしても良いじゃないか。
そういうのをさ、根性があるって言うんじゃないの」
偶然にも、私と同じ型の眼鏡をしていた彼はそう言ってにへらと微笑んだ。
それは入所後の面談も兼ねた事務手続きの席でのことで、屈託なくかけられた言葉は、
それまで私の体を縛っていた緊張の糸を容易くほどき――彼の前で涙を見せたのはこの時が最初。
あれ以来、涙腺が随分と緩くなってしまった気がするけど。
それは誰にも聞かせられない私の小さな秘め事だ。
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