34: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:40:27.77 ID:LgMjPCNT0
【二幕 壁を掘る人#3】
「それで、紗代子さんはどうしたいの?」と、目の前に座る小さな女の子は言った。
次いでストローの飲み口から唇を離し、半分ほどの量になったカフェラテの容器をテーブルに戻す。
ここは765プロライブ劇場内にあるラウンジ。
アイドルたちの憩いの場で、私は自分よりも遥かに年下な業界の先輩と席を共にしてた。
元子役アイドル周防桃子と言えば、齢十一にして事務所の誰より長い芸歴(キャリア)と共に、
デビューした時点で知名度だってある程度有していた鳴り物入りの麒麟児だ。
私みたいなオーディション組とは違ってスカウトで事務所に来たと聞くし、
事実、彼女は実習期間もそこそこに、大人組に混じって早々とデビューを果たしていた。
それを可能にするだけの実力も既に備えていたと言える。
そんな彼女に、私は今度の劇を演じる上でのアドバイスを貰いに来ていたのだ。
雪歩ちゃんと話した日からは既に一週間の時が流れていた。
本番までは、後半月の時間も残っていない。
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