3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 15:46:30.04 ID:LgMjPCNT0
『ご覧、ボクの言った通りだったじゃないか』と、
金物を鳴らした男装の麗人は用意されていた台詞を吐いた。
私は思い出したように手元の台本を確認すると、その台詞部分を指でなぞる。
演出として書かれている通り、微笑みの少女以外は誰も彼もが絶望に満ちた顔をしてる。
……だけど、それは言ってもしょうがないことだ。
何せ、自分たちを長年閉じ込めていた世界の壁に空けた大穴の先に見つけたのが――。
『壁の向こう側にはまた壁があった。
君はまだ、バカげた空言で穴を掘り続けましょうと言うつもりか?』
そうだ。舞台に用意されたスクリーンに大写しとなった壁の存在。
それはゆうに一時間を超えた演劇のラストを飾る為の代物。
そびえ立つ壁の向こうに理想のユートピアを描いた物語の登場人物たちと、
ハッピーエンドを期待してここまで見続けた観客を同時に叩きのめすための。
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