【モバマスSS】愛を知らない一ノ瀬志希と彼らの巡礼の旅
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◆TDtVvkz8pSL3
[sage saga]
2018/05/30(水) 01:21:57.09 ID:dFhLHRCO0
『……人はそれを、愛と呼ぶのだと思いますよ』
※このSSには一ノ瀬母死亡説、キャラの濃いプロデューサー、独自解釈、過去捏造が含まれます。ご留意ください。
SSWiki :
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2
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:22:53.94 ID:dFhLHRCO0
これだから天才は。
そうぼやきながら俺がノックのひとつもしないでラボのドアを開けたのは、別にいつものことだった。
ズボラなアイツのことだ、呼びかけたってモーニングコールを鳴らしたって、絶対に返事は来ない。
ただ、いつもよりも部屋の奥へ向かう足取りが速かったのに理由があるとすれば、それはきっと心の何処かで、嫌な予感を感じていたからだろう。
以下略
AAS
3
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:23:51.47 ID:dFhLHRCO0
志希の失踪は今に始まったことじゃない。
しかし志希が"失踪"をする時、こんな風にラボを整頓するようなことは今まで一度たりとも無かった。志希が趣味だと公言している"失踪"は本質的に失踪ではない筈だった。少なくとも俺が志希と出会ってから昨日までは。
だからこそ逆に、この部屋は今理路整然と、「一ノ瀬志希は失踪した」という事実を俺に証明しているのだ。
猫は自らの死を悟ると人前から姿を消すのだという。別に、アイツが猫のような気性をしているから、ということが言いたいわけじゃない。
ただきっと、虫の知らせというのはこういうものなんだろうと、去来する漠然とした不安に立ち竦んでしまう。
4
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:24:33.16 ID:dFhLHRCO0
しかしいつまでもそうしてはいられない。
何か手がかりは無いか、そう思い部屋を探索しようとした俺の目に、机の端にひっそりと置かれていた紙片が飛び込んだ。
何度も何度も消しては書き直した後の上に、最終的に記されていたのは、「Where am I?」という簡素な文字列だった。
『私は何処でしょう』、だと……?
以下略
AAS
5
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:25:16.76 ID:dFhLHRCO0
んー、いい天気!風が吹くとまだちょっと肌寒いけど。
今頃プロデューサーはどうしてるかな?慌ててるかな。それとも泣いてる?
以下略
AAS
6
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:25:50.01 ID:dFhLHRCO0
人の匂いは少し控えめ。
代わりに動物と草と土の匂い。
何処にいるのかって?
うん、岩手。
何でって?さぁ?何でだろうねー。なんでだと思う?
以下略
AAS
7
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:26:36.15 ID:dFhLHRCO0
アタシが"普通"でいられたのはきっと、この街にいた間だけだった。
いや、それも正確じゃないかな?
まぁ少なくとも、おぎゃあと生まれて病院ですやすやしてる間は他の赤ん坊たちと同じだったと思うよ。分かんないけどね。
ちっちゃな頃のアタシはそれはもうヤンチャわんぱく、まだ歩けないのにそこらじゅう這い回っては「あれは何かな?」「こっちはなんだろう」って見て回ってたんだよね。
ダッドは殆ど家に居なかったし、ママも大変だっただろうなー。
以下略
AAS
8
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:27:59.95 ID:dFhLHRCO0
事情が変わったのはもうちょっと後。
なにせ周りのみんながまだやっと言葉を話し始めた頃にもう自分の名前を平仮名で書いて、1+1の計算までしちゃうもんだから大騒ぎ。
あの時のママのあの顔の意味は……未だによく分かんない。
ともあれこうしてー志希ちゃんに贈られたプレゼントボックスは開封されたのでしたー。ぱちぱちぱち。
小学校に入学するころにはすっかり図書館のヌシだったね。
以下略
AAS
9
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:29:04.39 ID:dFhLHRCO0
そう、図書館にいられたのは、時間があったから。お昼休みにグラウンドで鬼ごっこをする友達もいなかったし、放課後に遊びに行く相手も場所も知らなかった。
別にそれ自体に不満があるわけじゃないし、あの頃のアタシも寂しいなんて思ってなかった。だって興味が無かったから。
だってクラスメイトと遊んでる時間があればもっとたくさん本を読んだり実験したり観察に出かけたり、できることが増えたし。
授業が難しいとか、宿題が解けないとか、そうやって会話をする必要も無かった。だって全部解けちゃうから。
そして素直な子供志希ちゃんはこう思うのです、「なんでみんなできないんだろう?」と……そんでもってそれを聞いちゃうんだ。
以下略
AAS
10
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:29:38.89 ID:dFhLHRCO0
そろそろだったかな。おっ、見えた見えた。
流石にここは変わってないにゃー。
あの頃との見え方の違いを比較すると成長したんだなって思うよねぇ。
うん、しっかり覚えてるよ?だって忘れられないし。願望じゃなくてジュンゼンたるフカノーセーだけどね。
こんなにちっちゃかったんだなー、ここも。
以下略
AAS
11
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:30:45.28 ID:dFhLHRCO0
低学年の頃はまだ良かったんだよね。
暗黙の了解として相互不干渉だったし、アタシにはママがいたから。ママはアタシのどんな疑問も謎も興味も、ぜんぶ受け止めてくれたんだー。
すごいよね、ママは別に天才でも何でもなかったのに。慣れてたのかな?ダッドはもっと大変だったのかもね。
でもね、死んじゃったんだ。アタシが5年生の時だったかな。
死因はね、癌。膵臓癌。見つかった時にはもう、末期だった。
以下略
AAS
12
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:31:35.42 ID:dFhLHRCO0
うちに帰ればママがいる。
たったそれだけのことが、幼い志希ちゃんにとっては心の支えだったみたいで、これからどうなるんだろうなーって珍しく不安になったんだ。
質問したくても答えてくれる人はいなくなっちゃったし、図書館の本も全部読み終わっちゃったし。あぁ、何もやることないなー、つまんないなーなんて思ってた時に、ダッドが一言、アメリカに来るか、って言ったんだ。
日本に留まるにも流石に保護者が要るし、かと言ってアタシみたいなのを引き受けてくれる親戚も見つからなかったらしくて、そのままじゃ施設行きか家なき子になるしかなかったんだってさ。
向こうならお前に合わせた教育をしてくれる。だが生温い世界では無いだろう。選ぶのはお前だ。志希がそれで良いのなら付いて来なさい。
以下略
AAS
13
:
◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:32:06.90 ID:dFhLHRCO0
んー、もうここで見るものは無いかな。
難しいなぁ、見つかんないや。飛鳥ちゃんや蘭子ちゃんなら地図を持ってるのかな。
まぁいいや、次いこー次ー。どこ行くかって?内緒!
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◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:32:57.47 ID:dFhLHRCO0
「首尾はどうですか?」
以下略
AAS
15
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◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:33:40.31 ID:dFhLHRCO0
「そうですか……すいません、お力になれなくて」
「いえいえ、元はと言えば俺の監督不行き届きですから」
失礼します、と言って出て行くちひろさんを、恐らくはぎこちないであろう作り笑いで見送ってから、大きく息を吐く。
以下略
AAS
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◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:34:21.39 ID:dFhLHRCO0
「おはよう、ございます……」
「鷺沢か。どうした?」
「いえ……志希さんのことで、折り入ってお話がありまして……」
以下略
AAS
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◆TDtVvkz8pSL3
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2018/05/30(水) 01:35:14.15 ID:dFhLHRCO0
「んで、話ってのは?」
「その……恐らく、彼女が失踪する前に、最後に会ったのは、私なのです……」
「……続けて?」
以下略
AAS
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◆TDtVvkz8pSL3
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2018/05/30(水) 01:36:19.22 ID:dFhLHRCO0
「しかし……これでは余りにも無責任に過ぎると思いまして……何か、私にお手伝い出来ることはないでしょうか?」
「と言われてもな……」
「例えば……そう、志希さんの残した暗号のようなものはありませんか?」
以下略
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◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:37:13.40 ID:dFhLHRCO0
「……プロデューサーさんはどうお考えなのですか?」
「只の嫌がらせの類……じゃあ無いんだろうな、流石に。そうなるともうお手上げだ。アイツの思考回路なんて俺には理解できねぇよ」
「……私にも到底理解は出来ません。出来ませんが……ある程度の推測を立てることは出来ます。幾つか、お尋ねしてもよろしいでしょうか」
以下略
AAS
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◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:38:10.87 ID:dFhLHRCO0
「志希さんは、貴方に何か相談をしたことはありますか?」
「ないな。質問責めにはよく合うけど」
「それでは、この紙と似たようなものは部屋にありましたか?何か走り書きのようなものがされている、といったものは」
以下略
AAS
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◆TDtVvkz8pSL3
[saga sage]
2018/05/30(水) 01:39:10.42 ID:dFhLHRCO0
「凡そ、ですが……掴めたかも知れません」
「本当か!?アイツは今どこにいるんだ!」
「い、いえ、何処にいるか、ではなく、何をしているのか……です」
以下略
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