8: ◆hQrgpWdMp.[saga]
2018/05/15(火) 21:50:41.88 ID:TeqkJU5v0
「本当に入るんですか?」
「うん! 冷たくて気持ちいいよ!」
今日の修練が終わり汗と土にまみれた2人は、ジータに誘われて森の中にある湖にやって来ていた。ジータは1人での修練終わりにもここで水浴びをして帰るのだという。
「その、誰かに見られたりはしないんです?」
「この辺りは魔物も人もこないから平気! ほら、早く〜!」
「待ってください、今脱ぎますから!」
さっさと裸になってしまったジータに急かされて、リーシャも周囲を警戒しつつ服を脱ぐ。人気のない森の中でジータと2人だけとはいえ、外で裸になることに羞恥心を覚えてしまう。
「水着持ってくればよかったなぁ」
「水着ってなに?」
いつかアウギュステの海で着た水着のことを思い出して呟くと、ジータが不思議そうに首を傾げた。
「あぁ、水着というのは水に入るときに着る服のことですよ」
「服着て水に入るの? 重たくない?」
「水に濡れてもいいような服ですから。海に行くときに着るんです」
「海! 知ってるよ、おっきな湖でしょ! 行ったことあるの!?」
「ええ。何度か」
「わぁ〜! いいなぁ〜!」
自分が見たことのない海を知っているというリーシャに、目を輝かせるジータ。
「本当に水がしょっぱいの!?」
「ええ。塩水なのでしょっぱいんです。なのでこうして水浴びをすると、逆にベタベタになって体を洗わなければいけなくなるんです」
「本当にそうなんだ! どうしてなんだろ、不思議〜」
真剣に考え込むジータの様子が可愛らしくてリーシャは思わず頬が緩んでしまう。
「ねぇねぇ、じゃああれは? 暖かいお水が出て来るの!」
「暖かいお水?」
「うん! 地面から暖かいお水が出て来てて、それに入ると病気とか怪我が治るって!」
「あぁ、温泉のことですね。とても気持ちいいですよ。病気や怪我にいいだけではなくて娯楽としても申し分ないです」
「すご〜い! セリアお姉ちゃん色んなところ行ったことあるんだね!」
「いえそんな、父に着いて回ってるだけですから」
無邪気な羨望の眼差しを向けられリーシャは何となく後ろめたくなりそう言った。自分の力で知ったことではないのだと。
「でもすごいよ! いつか私も行きたいな〜」
それでも変わらずほめてくれるジータの言葉が心地よかった。ほめてもらう度にリーシャの心の奥が暖かくなっていくのを感じる。
まだ出会ってたった1日だが、リーシャの中でジータの存在はとても大きなものになっていた。
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