遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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83: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/08/28(火) 22:57:24.16 ID:3l3UqrgJ0

ん?


んんっ?


「あれ?話が通じてない?いや、確かにちゃんとした宿に比べたら教会に間借りするのは安くついてるわよ。でも、無限の収入減が無い限り路銀は減る一方でしょ」

「ミノ達が言っていた、約束の期日はとっくにすぎているし。いつまでも、ここであそこを見張っているわけにもいかないでしょ?」


あー、あー、あー、そういうことね。
これは恥ずかしい。俺は、重大な勘違いをしていたようだ。つまり、彼女の言う『結末』とは、あくまで見張りをいつまで続けるかという話だったらしい。
だ、だがしかし、俺の気が緩んでいたのは事実だ。
今後は、確り気を張っていかねば。


「いやいや、うん。確かに、遊び人の言う通りだ」


「大丈夫?私の言ったこと、ちゃんと理解できてる?」


「もちろんさ!何を突然!わかっているさ、それぐらいのこと!俺は勇者だぞ!あなどるなよ!」


「えぇ……本当に大丈夫?」


彼女の言葉に、手を振ることで答え。(答えられていないかもしれないが。)
俺は、魔王軍の連絡員を押さえようと、見張りを続けている現状について改めて思考を巡らす。

確かに、俺たちはミノタウロスから情報を引き出した後、強行軍でこの村まで飛ばしてきた。
それは、連絡員に密造酒倉庫の強襲を悟られる前に動く必要があったわけなのだが。

しかし、現状、ランナー達と連絡員の接触場所である、あのあばら家に人の出入りは一切ない。
連絡員は危険に敏いのが必須スキルだと聞いたことがある。
それは連絡員が敵性の組織に捕まってしまった場合、連絡員が取り扱っていた情報はもちろんのこと、その連絡網自体から組織の体系が漏れてしまう可能性があるからだ。
もし、魔王軍がそういった危険性を知っていたとするならば、当然、連絡員である魔物は特に危険を感知する力に長けている魔族が担当するであろう。

いや、そうに違いない。そうでなければ、この半年の間、俺が一切の情報をつかむことができなかったことは、俺が単なる無能だと世に知らしめることになってしまう。
残念なことに、もしくは喜ばしいことに、勇者たる俺が無能であることなどありえない。だからこそ、俺たちが押さえようとしていた連絡員は、もう逃げたと考えるべきだ。
連絡員が自身で危険を察知できなかったとしても、俺たちが襲撃したミノタウロス達に他の緊急用の連絡手段があった可能性もある。

こんなことなら奴らを殺しておくべきだったと、後悔と苛立ちの念がむくむくっと起き上がる。
例え、遊び人が不殺主義の甘ちゃんだったとしても、俺は俺の勇者としての役目を確り果たすべきだった。

だいたい、彼女に指摘されるまで、この程度の考えに今の今まで至らなかった事にも心底腹が立つ。
これも、彼女と少しでも長く一緒に居たいという俺の欲望が目を濁らせていたのかもしれない。

落ち着こう。今は冷静に、判断を下すべきだ。

……仮に、連絡員に逃げられていたとしたら、時間の経過は痕跡の風化を招く可能性もある。
何処かのタイミングで見切りをつけて、乗り込むべきだ。


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