74: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/08/13(月) 23:29:31.05 ID:mSb4wVOg0
「ビ、ビールよりきつい。ワインを飲んだ後だとビールが水に感じられるくらい、とにかく味が濃い……」
「ビールが水ねえ、お酒初心者にしてはなかなか言うじゃない」
「味だけじゃない。香りもだ。これはもうブドウの域を超えている。ブドウを煮詰めて腐らせた香り?前言撤回だ、まるで香水を煮詰めたかのような匂いだ」
「香水を煮詰めたような匂いねえ。ねえ勇者、知ってる?ワイン通って、ワインの香りを何かしらに例えようとするんだよね」
「じ、じゃあ、俺も立派なワイン通だな」
「あはは、そうかもね。流石、魔王を追い詰めるほどの才能をもった勇者様だ。たった一口で、その領域に立ってしまわれるとは」
才能ねえ……。
人々は、いつも俺の才能を褒めたたえる。俺自身の努力ではなく、俺の持つ「勇者」という才能をだ。
女神より「耐性」という恩恵を受けているのは確かだ。そこは認めよう。だが、それだけでは到底魔王を追い詰めることなどできなかった。
それができたのは、俺が「耐性」に甘んじることなく自らの剣を磨き続けたからだと自負している。
彼女からすれば、本の冗談だったのだろうが。どうにも気を重くしてしまう。
そうだな、話題を変えよう。
「……例えば、どんな風に例えるんだ」
「そうねえ、こんなのはどうかしら。濡れた犬が暖炉で乾かしてる匂い」
「は?」
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