72: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/08/13(月) 23:28:37.09 ID:mSb4wVOg0
この僅かな時間に起きた事象を、ひとつひとつ噛みしめるように遡っていく。
グラスの半分にも満たないワイン
彼女の鳴らした喉の数
グラスにワインを注ぐ音……
そうか……答えは窓枠の上に、添え置かれたワイングラスだ!
俺の手が微かに震える。武者震いではない、俺は恐れている。
いま、俺の目の前に置かれているワイングラス。これは、彼女が先ほど使用したばかりのものではないのか!?
そして、グラスの中のワインの量がその事実を確固たるものとしている!
なんという魔性の女だ……このようなことをされて、抗えるわけがないではないか。
いや、落ち着け勇者よ。お前が成すべきことを思い出すのだ。この程度の誘惑に心踊らされて如何とする。
「ま、まあ一口だけなら……」
大丈夫だ。落ち着け、俺の理性よ。
ただの一口だけなら、酒に酔うこともあるまい。そのうえで、俺の猛きリビドーを抑制させるにはこの手段しかなかったのだ。
許せ。
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