57: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/07/19(木) 07:35:54.07 ID:/DWZcchK0
「ランダム性をもたすことで、対価の支払いを格安に抑えている……?」
「そ。それと、酔っぱらった状態で飲み使用可能というリスクを設けることで、そのランダム性に一定の指向性をもたせるってわけ」
魔力の代わりに、リスクを背負うというわけか。
人は、リスクを負うことで通常以上の力を発揮することができる。火事場の馬鹿力、命を懸けた特攻、そして足元がふら付くほど酔った状態で使うテレポートというわけだ。
「やっぱり、都合がいい魔法じゃないか……」
俺と遊び人は一発で魔王の手掛かりとなり得る密造酒の貯蔵庫に飛ぶことができた。
遊び人が、どの程度の魔力を使ったかはわからないが酔っぱらうというリスクに対してあまりに大きいリターンだ。
「そりゃうまく行ったからね。下手すると川のど真ん中にポチャンなんてこともあり得るのよ、それも酔っぱらった状態でね」
「泳げばいいさ。もしくは、改めて普通のテレポートで飛びなおすか」
「……私、泳げないのよ」
「それに、この魔法で飛んだ先からテレポートを使うのは不可能なのよ。決められた儀式を行わないと帰れないの」
「なんだか頭がこんがらがってきたぞ」
手をこめかみにおく。テレポート先からの帰還に、専用の儀式が必要なんて魔法は聞いたことがない。だが、それもまたリスクの一つなのかもしれない。面倒な条件を付与することで、対価の支払いを抑えているのだ。
ふと窓の外に、意識を向ける。この数日で、見飽きた光景に変わりはない。呆れるほど静かで、閑散としている。
「そういえば、先日の俺はいつのまにか宿屋に帰っていたな。その儀式を、君がやってくれたことで帰還できたということか」
「そうよ。この魔法はランダムで飛んだあとに自宅に帰るまでで一セットになっているの」
「それも、魔力を抑えるための条件なんだな」
「違うわよ」
「どういうことだ?」
「だから、酔っ払いが千鳥足で目的の店に辿り着くでしょ。でも酔っ払いだから、自分がどこにいるかもわからないし、帰れない」
「そしたら、お店が迷惑するじゃない。だから、この魔法は一度テレポートして帰還の儀式で自宅に帰るまでが一セットなの」
まったく理解できないのは、俺が魔法に疎いからであろうか。いや、そうではないはずだ。というか、そもそも俺は魔法に疎くはない。
しかし、テレポート先から、自宅までに戻るまでが一セットの魔法にどういう意味があるというのだ。彼女は、わかりやすく例え話で説明してくれているのだろうが、それが余計に話をわかりにくくしている。
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