遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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40: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/17(日) 18:21:49.83 ID:3k6rJQ/z0


「おい、よそ見するな!後ろだ!」


俺の視線に気づいたのか、彼女が声を張る。俺は、慌てて振り返る。ミノタウロスの横薙ぎ。
足元がふら付く。十分に避けられる速さだ、ただし俺が酒に酔っていなければの話だった。
狙いは首。咄嗟に左腕で庇う。俺の首は、左手ごと寸断――――とはいかなかった。激しい金属音とともに、ミノタウロスの斧は左手の薄皮一枚で止まっている。


「鎧でも仕込んでやがっだが!?」


ミノタウロスが叫ぶ。残念ながらそうではない。奴の斧を止めたのは間違いなく、俺自身の左腕。
これこそ、俺が勇者として魔王に立ち向かうことができた理由。女神よりの祝福。耐性の力。
俺の左腕は、魔王討伐の旅で幾度となく斬り落とされた。幾度の失敗に学んだ俺の肉体は、女神より与えられし力をもってして学んだ。
そうして出来上がったのが、何者も。例え魔王であろうと、斬り落とすことができない絶対の斬撃耐性がついた左腕なのだ。

ミノタウロスは力を更に籠める。俺の左腕がじりじりと押されていく。
残念なことに、俺は首を落とされた経験がない。つまり首にまで斬撃耐性があるわけではないのだ。
右手の剣で……いや、踏ん張りがきかないうえに片腕だけで剣を振ったところで、ミノタウロスの厚い皮は破れないだろう。
剣を手離し、その手で左腕を支える。力比べと行こうじゃないかミノタウロスさんよお!


「ミノタウロスと力比べなんて、ばっかじゃないの!」


遊び人の投げたナイフが、俺と対峙していたミノタウロスの右目に刺さる。ミノタウロスは斧を落とし、泣き喚いている。
馬鹿はお前だ!一本しかないナイフを投げるなんて―――何処から取り出したのか、遊び人は両手にナイフを構えている。
何処にしまってたんだ、そのナイフ。まさか、スカートの中か?


「敵は、そいつ一匹じゃないんだからね。ほら、手伝ってよ!」


魔物達は刻一刻と数を増し、その数は10数体にも及んでいた。背中合わせの俺たちを中心にして、完全に囲まれてしまった。
普段の俺ならば、まず間違いなく隙を見て逃げ出す状況だ。もしくは、耐性の力をフルに発揮してのごり押し。
魔物から尻尾を巻いて逃げる勇者。もしくは、ズタボロになった衣服で、魔物達の流した血の池の中に佇む勇者。
どちらの結果だろうと、傍目から見たらとても美しいとは言えない状況に陥っていたことだろう。

だが今日の俺は、そうはならなかった。
まず、遊び人にその気がない以上、逃走は論外。かといって、耐性を使ってのごり押しという状況にはなっていない。
四方八方からの魔物による攻撃は、背中を任せる遊び人によって的確にいなされていく。
正直に言って、彼女の目は異常だ。正面の敵にだけ集中している俺とは違い、敵全体の動きを把握している。


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