39: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/17(日) 18:21:22.38 ID:3k6rJQ/z0
俺は、持っていたジョッキをそっと木箱の上に置き。代わりに剣を抜く。
こんなことなら、軽装で来るべきでは無かったな。せめて皮の鎧だけでもあれば。
代わりに防御魔法を自身にかける。だが、魔法が巧く発動しない。酔いのせいか、呪文が巧く紡げない。
「なんだあ!人間の匂いだ!」
「おい!全員出でごい!人間が紛れごんでるぞ!」
倉庫の奥から、魔物達の気配がゾロゾロと出てくる。思っていたより、魔物の数は多いようだ。
それに統制がとれている。奴らが、俺と遊び人を包囲する形で布陣をとろうとしているのが木箱越しに感じられる。
久方ぶりの魔物との戦闘。しかも奴らの拠点で。こちらは、軽装な上に酒が入っている。
遊び人をチラリと見る。彼女に至っては、ワンピースにナイフ一本、しかも職業は遊び人。誰の目から見ても、劣勢だな。
「お前は、隠れていろ。俺が遊撃に出る」
「いらぬ心配だね、元騎士だって言ったの忘れた?それと、殺しちゃだめだからね」
「魔物をか?何故だ」
「魔王の情報が欲しいんでしょ?それに―――」
「それに」
「密輸業者が全滅しちゃったら、誰が酒を運ぶのよ!」
木箱の陰から、魔物が数体躍り出る。人の倍はある身の丈に、牛の頭。ミノタウロスだ。
ミノタウロスは、その手に握られた斧を振り下ろす。
斧が起こす風を頬に感じるほどの距離で、かろうじて躱す。
ミノタウロスは勢いあまって、地面に斧を突き立てている。
その一瞬の隙を逃さず、奴の角を斬り落とす。俺の腕に掛かれば、鋼に劣らぬ強度をもつミノタウロスの角などチーズと同じだ。
ミノタウロスの表情は、恐怖に歪む。臆したな、こいつがこの戦闘中に立ち直ることはないと判断し。剣の鞘で、顎を打つ。
ミノタウロスは仰向けに倒れた。
どうだ、これが勇者の実力だ。と言わんばかりに、遊び人に視線を送る。
彼女は、敵の懐にもぐりこみナイフを奮っている。まるで踊り子のように、くるくると回り、ミノタウロスを翻弄している。
彼女が回るたびに、短いスカートがひらひらと浮き上がる。
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