遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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30: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/08(金) 22:54:49.71 ID:/Kiw1pMk0


『遊び人』彼女はそう自称していたが、その派手な恰好はどちらかというと道化だ。

当然、口には出さない。道化と言われて喜ぶ女がいないことぐらいは、経験の少ない俺にでもわかる。

まあ彼女が普通ではない、道化と言われて感極まる異常者である可能性は完全には拭えないが、彼女の機嫌を損ねる危険を冒してまで試すことはないだろう。

……あれ、俺はなんで彼女の機嫌なんかに気を配っているんだ。


「私は、遊び人よ!」

「付け加えるとしたら、勇者様が魔王軍を壊滅状態に追いやったがために職を失った。元騎士の現遊び人」

「そんな私が、ビールとエールの違いなんて知るわけないでしょう。酒は語るもんじゃない、飲むものよ!」

彼女の感情の起伏の激しさには目を見張るものがある。つい先ほどまで、ビールのあれこれを語っていたのは自分だというのに。

酔っ払いとはみなこうなのか。ん、これさっきも言ったな。

もしかしたら俺も酔っているのかもしれない。

しかし、元騎士の遊び人か……。


―――軍事組織としての魔王軍が壊滅して以来、王国の軍事費は縮小傾向にあった。

争いが完全になくなったわけではないものの、対魔物用に整えられた装備は人間を相手にするにはあまりに強力すぎており。

その絶大な威力と同様に、維持費もまた莫大なものであったためだ。


なにより、人々は新たな争いよりも生活の再建を望んでいた。

結果として、戦乱に乗じて乱立された多くの騎士団が解散される結果となった。

彼女も、そんな解散した騎士団の中で路頭に迷うこととなった一人なのだろう。


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