遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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278: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/08(土) 22:28:18.61 ID:ABaWR+nR0

 それは、一か八かの賭けであった。俺は、魔王から繰り出される鉄の拳を目で追う。これを捕らえられなければ、体勢を崩した俺は次撃で死ぬことだろう。そのあまりの緊張感からか、時間がやけに遅く感じられる。俺は、スローモーションの世界の中で魔王の機械の腕を半身で受け流し、そのまま伸び切った腕を脇で固めた。


「うおおおおおおお」


 片腕を、俺に抑えられた魔王が顔面にパンチを入れてくる。だが、腰の入らないパンチに、先ほどまでの威力はない。



「せりゃああああああ!!!」


 俺は、気合をいれ機械の腕をへし折った。鉄の部品が、ガチャンガチャンと音を鳴らしながら崩れ落ちていく。腕は、かろうじて魔王の体に繋がっているものの力が入らないのか振り子のように揺れていた。


「くっ……腐っても勇者ということか」


「もうやめよう魔王。俺に争う気はないんだ」


 俺は、害意がないことを示すために両手をあげて魔王に歩み寄る。


「寄るな変態! 今度は、我を変態的な技法で縛り上げるつもりだろう! そうはさせるか!」


 魔王は、そういうと床に転がっていあ遊び人の体に駆け寄った。


「せめて、我が娘の体だけは守って見せる」


「あ、頭はどうなってもいいのか?」


「……こ、この変態め! 娘の頭で何をする気だ!」


 思わず口にした疑問で、更なる誤解を魔王に与えてしまった。この場を納めるには、魔王の実の娘である彼女しかいない。俺は、僅かな希望を遊び人へと託すこととした。


「やれっ! 勇者! 殺さない程度にパパを痛めつけて! そしたら私が次の魔王だ!」


 もうだめだ……。


「我が娘よ、まだそんなことを!」


「うるさい! くそじじい! さっさと隠居して席をゆずれ! ばーかばーか!」


 魔王と目があう、その死んだ魚のような目に俺は何もかもを察した。ああ、ずっとこの調子で罵倒され続けていたのだな魔王よ……。

 魔王は、どこからともなくスキレットを取り出し口を付けた。その目はわずかに潤んでいるように見える。


「……っ。あ、頭は置いていく! だが、娘の貞操だけは我が守る!」


 魔王は、スキレットを懐にしまいこみ。遊び人の体を優しく抱え上げる。


「な、なにを……する気だ!?」


「貴様らの知る由も手段を用い、貴様らの知る由もないところへ逃げるまでよ!」


「勇者! 魔王を今すぐ捕まえて!」


「さらばだ勇者に我が娘よ! 千鳥足テレポート!」


 遊び人の言葉に、反射的に俺の体が動く。だが俺の腕は、空を切る。既に魔王の体は、光の粒子となって部屋の中から姿を消していた。よりにもよって、俺らが魔王を探すべく散々使ってきた千鳥足テレポートを使って、魔王は何処へと消えてしまったのだ。


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