遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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273:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/06(木) 20:32:59.15 ID:xe7KZDDc0


 遊び人は、目をつぶってうーんと唸る。


「体は、魔王の言うことを絶対に聞くから、勇者を殺さないよう魔王に命じてもらうか。もしくは……」


「もしくは?」


「魔王をぶっ倒して、私が次の魔王になるってのはどう? そうすれば、自分の体を律することもできるかも」


 その時、俺の体に震えが走った。いや、震えているのは俺だけではない、俺の正面に据わっている彼女の頭も、グラスに注がれたウイスキーも、カウンターの向こう側に並んでいる酒瓶たちも。今この場にある、全ての物が突然震えだしたのだ。


「なんだ!?」


「まずいわ! アイツが来る!」


 アイツ? いや、そんなことは聞くまででもない。この徐々に大きくなる揺れに伴い、部屋を満たしていく禍々しいオーラ。俺は、こいつを経験したことがある。

 地面から立ち上るオーラは、ゆらゆらと地面を走り円陣やルーン文字を形どっていく。術式は、テレポート魔法。アイツがこの部屋にやってくるための通り道だ。完成した魔法陣は、ひときわ光を増し俺と遊び人の視界を一瞬だけ奪った。俺は、光を遮る自身の手の指の隙間からアイツが魔法陣から出てくるのを見た。光が収まっていくと同時に、その男の輪郭が明らかになっていく。

 全身から溢れる、禍々しいオーラ。クロークの上からでもわかる、その逞しい肉体。頭に生えた二本の角が彼が人間でないことを物語っている。そのシルエットは、彼を取り逃がしたあの日から全く変わっていないように思えた。

 だが全て同じかと言えばそうではない。長い年月は、アイツにも変化を与えていた。クロークの隙間から垣間見える金属特有の光沢をもった右手。より一層、凶悪となった表情がそれだ。俺が斬りおとした右腕は、どうやら機械仕掛けの義手へとすげ変わったらしい。だがあの表情はなんだ。目からは生気が失われ、顔全体に暗い影が落ちている。逞しい肉体とは裏腹に、その表情は痩せ衰えているように見える。

 
「魔王。いったい、お前に何があったというんだ……」


 そのあまりの変貌ぶりに、俺の口から思わず魔王を慮る言葉が漏れ落ちた。


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