272: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/06(木) 20:32:32.97 ID:xe7KZDDc0
「魔族の血は、私に魔王に従順たることを求めた。失ったはずの忠誠心が、私の体から自由を奪った。……このままだと、魔王の天敵であるキミの寝首を掻きかねない、そう思った私はキミの前から姿を消した」
「体が俺を殺そうとするのはそういうわけだったのか……だが、キミはどうやって魔王軍に合流したんだ」
「キミの下を去ったあと、千鳥足テレポートを使ったらあっさりと魔王の下へとたどり着いたわ。多分、強い忠誠心が千鳥足テレポートに干渉したんだと思う」
千鳥足テレポートは、行使者の思いを読み取る魔法だ。強い願いは、そのランダム性の振れ幅を抑えるのかもしれない。だが、俺とて本気で魔王を追い、そして遊び人の後を追っていた。それでもなお、たどり着けなかった。決して、自身の思いが弱かったのだとは思えない。だとすれば、魔族の魔王への忠誠心とは我々人類が計り知れないほどのものなのかもしれない。
「じゃあ、キミは魔王に物申すという目的は果たしたのか。それで、魔王は説得できたのか?」
「説得は続けてるわよ、相変わらず魔王のやり方は気にくわないからね……でもね、頭はそうでも体は魔王の言葉に逆らえないの」
俺を心配する素振りを見せながら、本気で殺しにかかってくるわけだ。俺はその様子を、頭と身体がチグハグだと感じたが、実際のところ、彼女にとって頭と身体は別個のものなのだ。
「君の体は、解き放てば、また俺を殺しに来るかな?」
「……たぶん」
「手段はないのか?」
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