271: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/06(木) 20:32:06.57 ID:xe7KZDDc0
「半分はキミのせいでもあるんだよ」
「俺のせい?」
「こんな伝承を知っているかい? デュラハンは、死が近い者の前に現れタライ一杯の血を浴びせるんだ。私が死を予言すると言われる所以だね」
「それが、どうして俺のせいって話になるんだ」
「私が、《ゾクジン》から帰ることができなくなってキミが迎えに来てくれた日のことを覚えている?」
忘れるものか、俺たちはあの日仲直りをして二人で宿屋へと帰った。そして、翌日の朝にはキミは姿を消していた。俺がこんなところまでキミを追ってこれたのは、あの日の二人の関係があったからこそだ。一人で国中をさまよっている間、それだけが俺の心の拠り所だった。
「宿屋に帰って……そのあと、私たちは酒を飲みなおすことにした。……キミは、私の為に酒をもらってくると言って部屋を出て行った。足元がふらついていて危なっかしかったけど、まあ勇者なんだし大丈夫だろうと見送ったの。ほどなくして戻ってきたキミは、その手に水差しを抱えてた。そしてその水差しは、私のグラスにその中身を注ぐ前に宙を舞った」
「宙を?」
「床に散らかっていたクロークに足を取られたキミは、水差しを宙に投げ出しすっころんだの。私はそれを見てケラケラ笑っていた。でも、それも長くは続かなかった。……キミは、水差しの中に入っていたを頭から被ってしまっていた。よりにもよって、水差しの中身は赤ワインだった。まるで血を浴びたかのようなキミの姿に、私は血をたぎらせてしまった。デュラハンとしての、魔族としての血を」
「でも、伝承じゃ浴びせるのは血なんだろ? なぜ、たかが赤ワインなんかで」
「たかがじゃないわ。教会だって、血の代わりにワインを儀式に使うじゃないの。ワインってのは、血の代替品でもあるのよ」
血の代替品という言葉に、自身の血管を流れる赤ワインを想像する。
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