遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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266: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/05(水) 22:40:08.07 ID:1oYqpqim0

 俺たちは、目が覚めてジタバタもがいている身体をよそにバーカウンターに並べられた椅子に腰かけた。バーカウンターの上に据えられた彼女の指示で、俺はグラスに琥珀色の酒を注ぐ。独特な芳ばしい香りが鼻を衝く。


「水で割るか?」


「いや、ウイスキーはストレートが好きなんだ」


 グラスを傾け、彼女に一口だけ飲ませてやる。そうしてから、ようやく自分のグラスに口をつける。強いアルコールが喉を焼く。だが、耐性のおかげでちっとも酔えそうにない。


「なあ、今更だけどさ。教えてくれよ君のこと」

 
 こうやって、酒を酌み交わしつつ彼女と会話するのはカクテルバー《ゾクジン》以来のことだった。あの日、俺たちは語り合うべき話を語り合わずに終わった。俺には、それが彼女がいなくなった遠因に思えてならなかった。俺が、もう少しでも彼女のことを知っていれば、こんなに苦しい思いをしなくてもすんだはずだ。

 俺の強い意志が伝わったのか、彼女はぽつりぽつりと話し出した。


「私は、暗黒騎士でデュラハン。魔王軍の中でもそこそこの力を持つ魔族なの。魔王軍が壊滅した……キミに魔王を倒された時、私は単独で任務に就いていたんだ。そのせいで、姿を隠した魔王軍の残党たちと合流することができなくなってしまった」


「じゃあ、キミは魔王軍に合流しようとしていたのか?」


「いや違うの……まあ、最後まで聞いてよ。どんなに探しても魔王は見つからなかったの。その頃はまだ、千鳥足テレポートも知らなかったし私に魔王を探し出す手段はなかった。それで、私は諦めてしまった。そして私は、自分の頭と身体を糸で縫い付け、人に紛れ静かに暮らすことにした」

「そうして何年か経った頃、違法酒場で飲んでるときに魔王軍がラムランナーを始めたって噂を聞いたの。私は、再び魔王を探すことに決めたわ。でもそれは、元魔王軍の暗黒騎士として魔王軍に合流するためではなく、いち酔っ払いとして、ラムランナーなんてしている暇があったら酒造業界を取りまとめて天下の悪法『禁酒法』と戦えって物申してやりたかったからなの。それを決めたときは、変な気持ちだったわ。かつての私なら、魔王のやることに異を唱えるなんてありえなかったんだから」


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