260: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/02(日) 20:05:58.31 ID:NZ43uSLl0
「おいおいおい。お前の大鎌は酒瓶の首を落とすのにちょうどいいじゃないか」
彼女の体に向かって、あらんかぎりの嘲りを送る。
「それともただ見えていないだけか? 俺の首は、ここだぞ」
空いた左手で手刀を作り、自分の首をチョンチョンと小突いて見せる。語る口を持たない身体であるが、立ち上るオーラで怒り狂っているのは見て取れた。
体は、息つく暇もなく大鎌を振るってきた。俺は、それを片っ端から躱しながら棚に並ぶ酒瓶の首を落とさせていくと同時に遊び人の口に代わる代わる酒瓶を差し込んでいく。
「えっぐ……えっぐ……」
彼女の頭が、涙を流していた。
いや、これはさすがに俺が悪い。いくら、彼女を酔わさなくてはならないからといって無理やり口に酒瓶を押し込むのはやりすぎだ。俺は、慌てて彼女の口から酒瓶を取り上げ、体に向かって投げつけた。
「す、すまん遊び人。大丈夫か?」
「私の秘蔵の酒がぁ……せっかく溜め込んだ酒たちが……!」
どうやら、俺の心配は杞憂であったらしい。
「言ってる場合か! さっさと酔いつぶれてしまえ!」
「大事に飲もうって思ってたのにぃ!!!」
完全に油断しているところに、再び大鎌が襲ってきた。気を逸らしてしまっていたこともあり、俺はその一撃を躱すのに大きく飛び退るしかなかった。カウンターから飛び出た俺の前には、もう酒には近づけないぞと彼女の体が立ちふさがっていた。
296Res/317.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20