257: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/06/02(日) 20:04:27.82 ID:NZ43uSLl0
状況を理解するまで、少しばかり時間がかかった。俺は、自分自身の力を見誤っていたのだ。その膂力は、とうに人の域を超えていた。まさか、身体から頭をちぎり取るほどに増していただなんて思いもよらなかった。なにが「魔族は危険だ」だ。本当に危険なのは俺自身ではないか。
驚きと、悔しさ、悲しさ、言葉に言い尽くせない様々な感情が俺の中でせめぎ合っている。俺は、どうすればいいのだ。俺、はどうするべきなのだ。この気持ちをどう表せばいいのか、俺にはわからなかった。そんなとき、どこからともなくすすり泣く声が聞こえてきた。
ああ、そうだ。こんな時は、泣くしかないじゃないか。愛する人を、この手で殺してしまったのに涙の一つも流さないなんて、それこそ人ではない。……ん? ところで、泣いているのは誰だ?
「うぅ……」
俺の腕に抱かれた、遊び人の頭が泣いていた。
「生きているのか……?」
「いやだよね、こんな女……身体から切り離れても喋る頭なんて……」
「キミは、デュラハンだったのか」
デュラハン。首なし騎士。人の死を予言すると言われる妖精だ。
「……いやなことあるか、こっちはキミの正体がスライムやオークの可能性だって考えていたんだ。そのうえで、それでもキミを愛すと覚悟を決めていた。首がないぐらいなんてことない」
「じゃあ」
「だから、首がないぐらいで泣くな」
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