242: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/25(土) 17:33:13.08 ID:qW+Kebhi0
「どうやら、俺は勇者失格なようだ……かつて身に宿していた使命感は既に腐りきってしまった。もはや、自身のことを《勇者》だなどと名乗ることも憚られる」
「そうですね……それでしたら貴方は《ビール》とでも名乗ったらいかがです?」
「はぁ?」
「だってかつて《勇者》であった貴方は、《甘くなり》そして《腐って》しまったのでしょう。まるでビールではありませんか」
「ま、まぁ、そうかもな。そうだな、じゃあ今後は《ビール》と名乗るとするか……」
マスターは少し酔っているのだろうか、もしくは彼女の無事が知れて気が緩んだのか。よくわからないことを提案してきた。酔っ払いのたわごとであろうが、楽しく酔っている人間に水を差すのも気が引ける。俺は、マスターの提案を受け入れることにした。炎魔将軍が、そいつはいいなと高らかに笑っている。憎々しい酔っ払いめ。張り手の一発でも食らわせてやりたい気分だ。
「さて、私は店の準備がありますのでそろそろ失礼します。《ビール》様、どんな困難が待ち受けているかはわかりませんが、必ず乗り越えて、また二人で私の店にお越しください。ツケもたまっているのですし」
「ツケ?」
「貴方が空けてしまったウイスキーは、銀貨二枚じゃ到底足りませんよ」
マスターはそう言うと、千鳥足テレポートを使って飛んで行ってしまった。
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