遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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239: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/25(土) 17:31:50.23 ID:qW+Kebhi0


 そんなこと考えもしていなかったさ。だがマスターの言い分は、至極尤もなものだ。魔王の代替わりによる再びの戦火。その可能性は十分に起こりうる。だが勇者としても、一個人としても魔王を打ち倒すことが許されないなんて。ならば、俺はいったいどうすればいいというのだ。魔王を倒すこともできず、千鳥足テレポートをつかうこともできずに俺はただ一人何をするでもなく呆けて立っていなくてはならないのか。

俺とマスターは先ほど同盟を結んだ。俺たちは、いま彼女を探すうえで協力関係にある。仮に、俺が役立たずに甘んじていたとしても、きっとマスターは彼女を見つけ出してくれるだろう。だが、いくらマスターが手を貸してくれるからといって、俺が指をくわえてそれを見ているわけにはいかない。マスターにはマスターの理由がある様に、俺には俺が彼女を探す理由がある。


 マスターの言葉に、俺は勇者としての使命と彼女に再び相まみえたいという一人の男としての葛藤に苛まれた。だが、この鈍った思考の中では、とても結論を出すことは適わないだろう。使命か恋情かの板挟みに置かれる中で、俺はほとんど無意識に「それでも、魔王は倒さなくちゃいけないんだ……俺は彼女に会わなくてはならないんだ……」と口に出してしまっていた。


「そんなに彼女に会いたいなら会わせてやる」


「はぁ?」


 目の前の赤ら顔の男が何を言っているのか、わからなかった。会わせてやる? 彼女に? 彼女とはいったい誰のことだ? いや、いやいやいや、今この場において俺が会いたいと思う女性なんて一人しかいない。炎魔将軍は言っているのだ、俺が会いたいのなら遊び人に会わせてやると。それ以外に解釈のしようがないではないか。だが何故だ。何故、こいつが俺が遊び人のことを追っていることを知っている。


「あの娘は無事なんですか?」


「ええああ、先代の目的も彼女だったのですね。引退した貴方が、我々に接触を図ってきたのはビールではなく彼女にあったわけですか……」


「私に、二度同じ質問をさせる気ですか?」


 マスターから、本日二度目の本気オーラが立ち上る。炎魔将軍の額から、汗がしたたり落ちた。


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