225: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/22(水) 21:54:36.54 ID:n2QIU6Th0
先ほどのやり取りからも伺い知れたが、炎魔将軍はマスターに頭が上がらないらしい。まあ、マスターは先代の魔王であるのだし当然と言えば当然か。
「ところで……麦芽ってなんだ?麦とは違うのか?」
俺の質問に、炎魔将軍がため息をついた。
「麦芽は、麦に水を与えて芽を出させたものだ。そうすることで、麦の中の糖分が増すんだ」
「糖分を増やす?つまり、ここでは甘いビールを作るってことか?」
「そうじゃない、その糖分を原料に酵素がアルコールを作るんだ」
「酵素?」
「お前は、何だったら知っているんだ……要は菌のことだ」
飲む専門で酒が如何に造られているかなど知る由もなかった俺としては、炎魔将軍の話は悔しくも興味をそそられるものだった。ついつい、敵地のど真ん中であることも忘れて話に聞き入ってしまう。
「次はこちらです」
炎魔将軍につきしたがい、俺たちは再び大樽の間を抜け階段を上り中二階の通路を進む。物に溢れ死角だらけの一階も、上から見回せば、倉庫の最奥まで見渡せた。一階を覗いてみると、素足の人間たちがセカセカと働いている。その体つきは一様に大きく、力にみなぎっている。おそらく、俺が気を失っている間に魔物たちが再び人の姿に化けなおしたのだろう。
「ちょうど真下にある釜で、熱湯を沸かし麦と麦芽を加えた麦芽ジュースを作っています」
「甘い匂いがするな」
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