224: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/22(水) 21:54:09.17 ID:n2QIU6Th0
炎魔将軍が先頭に立ち、そのあとにマスター、そして俺が続く。階段を降り、大樽の間を進んでいくと背の高い円筒状の構造物が見えてきた。円筒状の先は円錐となっており、倉庫の天井を突き破りそうな勢いだ。
「ビールが何でできているかは知っているな?」
炎魔将軍が前を向いたまま、唐突に声を発した。その口ぶりから察するに、マスターではなく俺に問いかけているのだろう。
「麦だ」
「まあ、その通りだ。正面向かって右手のサイロには大麦が、左手のサイロには麦芽が入っている」
目の前に並ぶ円筒状の構造物は、サイロと言うらしい。たしか農村とかにある、穀物を貯蔵するための設備だったはずだ。
「なんで、建物の中にサイロなんか建てたんだ?」
「馬鹿かお前。外に建てたら目立つだろ」
確かにその通りだった。ここは、禁酒法が定められているこの国にとって違法な設備以外の何物でもない。その程度のことにすら考えが及ばないとは、どうやら俺の思考はまだだいぶ鈍っているらしい。
「麦芽もここで作っているのですか?」
「いえ、ここでは手狭ですので。麦芽は、よその業者に任せてます」
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