195: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/08(水) 19:45:41.49 ID:uG8tzRkA0
「……あるが、どうするのじゃ?」
「いえ、酔えなくはなったのですが、せっかくですからここのワインの味ぐらいは確かめて帰ろうかと……」
もし、俺の言葉が司教の怒りに触れたのなら、その時は素直に鞭を受けよう。どうせ、耐性の力のおかげで、たいして痛くはないのだから。そう思った俺は、正直に本音をそのまま司教へと伝えた。
司教は、目をつむり手を顎にあて「うんうん」と唸りだした。
「耐性の力を抑える方法はないが。魔王を見つける手段なら……実のところ……ある」
「実はな、魔王軍と思しき連中の拠点を一つ見つけての」
「あやつら、遂にこの王都にまで、その魔の手を伸ばしてきおったのだ。最近、ワインの売り上げが芳しくないと思って調べたらこれじゃ……まったくゴキブリのような連中じゃ」
唐突に、俗的な口調で話し出した司教に、俺は言葉を失っていた。かつて、この俺に教会の戒律を叩きこんだ厳しい神父様と
、いま俺の目の前で、汚い言葉で魔王軍を罵る男が同じものだとは到底思えなかったからだ。
しかし、司教の話はとても聞き流せる内容ではなかった。司教の変貌ぶりは重要なことではないと、頭を振って、司教へと向き直す。
「ちょっとお待ちください。どういうことですか?」
「じゃから、魔王軍の連中がこの王都に潜んでいるということじゃ」
「やつら、いまや我ら教会の最も強大な商売仇じゃからな。ちょっと行って、ぶっ潰してきてくれないか?」
「そこには魔王も?」
そうだ、魔王さえ倒してしまえば、俺は耐性の力を失うのだ。そうすれば、また千鳥足テレポートを使えるようになり、遊び人を探しに行くとができる。しかも今度は、勇者としての責務も消え、罪悪感に悩まされることなどもない。大手をふって、彼女の尻を追いかけることができる。
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