194: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/08(水) 19:45:13.75 ID:uG8tzRkA0
「かつて、お主と同じように女神から力を授かった勇者はたくさんおる。不死の力、莫大な魔力、全てを見通す目、まあ力は様々じゃが、共通している点がひとつ……」
「そ、それは……」
ごくりと唾を飲み込む。
「魔王を打ち倒した後は、力を失い平穏な日常を享受したということじゃ」
「魔王を……」
本末転倒ではないか。建前上でも魔王を追うために、耐性の力を抑えたいというのに。そのためには、魔王を打ち倒さなくてはならないとは。見つけられないのに、どうやって魔王を倒せと言うのだ。
「ほ、他に手段はないんですかね……司教様」
「残念じゃが……」
思わず、ため息がこぼれた。藁にもすがる思いだったが、どうにも事はうまくいかないようだ。諦めて、各地の酒場で地道に聞き込みを続けるしかないようだ。
しかし、わざわざ王都まで出張ってきたのだ、手ぶらで帰るというのは何となく味気ない。そんな気持ちが、ふと口をついて出ていた。
「そういえば、ここにもワインはあるんですよね?」
司教の目が、先ほどまでとは打って変わって鋭い物へと変わる。まずい、なにか地雷を踏んだか?
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