184: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/03(金) 16:34:09.86 ID:KfriHW7I0
……マスターの言うとおりだ。
いったい俺はいつから、こんなにも弱くなってしまったのだろう。
例え初めての経験だろうと、その勇気をもって臨むのが勇者ではなかったか。
その名に恥じぬ男ぶりを見せないで、何が勇者であろうか。
俺は、覚悟を決める。
彼女の目に正面から向かう。
遊び人は相変わらず疑問符を頭上に浮かべたままキョトンとしている。
「今夜、俺の部屋に泊っていけ」
遊び人は、ポカーンと口を大きく開け固まってしまった。
そして、じわじわと時間をかけ口を閉じ、終いには俯いてしまった。
振られたか……?
彼女は面をあげる。
だが、目は開いていない。
「そ、それでは、宴もたけなわでございますが……」
急に改まった口調に、俺は彼女の意図を汲みかねる。
「たけなわ?」
「に、二本締めと行きましょう」
「二本締め?そんなの聞いたことないぞ……?」
「よぉお〜〜〜!」
パンパン。
乾いた音が二回、店内に響き渡る。
有無を言わさない彼女の掛け声にあわせて、俺はつい手を合わせてしまっていた。
光が俺と彼女の体を包み込む。
つまるところ、これはそういうことなのだろう。彼女なりの承諾ととってしかるべきなのだろう。
なんだこいつ、人のことを初心だの何だの散々馬鹿にしておいて。
帰ったら、そのあたりをトコトン問い詰めてやる。
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