168: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/01(水) 13:10:19.54 ID:/dcHJZ9Q0
いつの日か、遊び人が言っていたが。
確かに金づちの彼女が、今の俺と同じ体験をする可能性を鑑みれば、この魔法のリスクは相当なものだ。
彼女からしてみれば、海に飛ばされるイコール死に直結するのだから。
初めての千鳥足テレポートは、大失敗だった。
俺は、必死に足をばたつかせ両手を頭の上に掲げ、そうして何とか、手を二回パンパンと叩いた。
再び光にのみこまれ、目を開けるとそこは先ほど旅立ったばかりの宿屋だった。
俺から流れ落ちた、水が足元に大きな水たまりをつくっている。
階下へと降り、宿屋の主人にタオルを借りる。
「うお、兄ちゃん、びしょ濡れでどうしたんだ。それになんだか、なまぐせえぞ」
「魔法に失敗したんだ」
「……ほどほどにな」
宿屋の主人に礼を言い、部屋に戻った俺は再び酒に口をつけた。
初めてワインを口にしたとき、そのあまりの渋みと強い香りに絶句したものの。
それでもなお、飲み進めるうちに、それらを楽しむ余裕が生まれてきたものだが。
幾度の邂逅を果たそうと、この自家製酒には慣れそうにもない。
「千鳥足テレポート!」
そこは、ゴミ捨て場だった。
早々に部屋へと帰還した俺は、訝しげな眼を向けながら鼻をつまんでいる店主に湯を借りた。
こざっぱりとしたところで、再度、酒を口に含み挑戦する。
「千鳥足テレポート!」
目の前に広がるのは、赤い海。否、ごうごうと泡を吹き上げているそれはマグマだ。
それに鼻をツンとつつく、卵の腐ったような臭い。間違いない、ここは南の山岳地帯、火龍の住まう火山だ。
ひどい熱気と、まずい酒のせいか頭がくらくらする。
少し休もうと、手ごろな岩に腰掛けると、あまりの熱さにズボンが発火してしまった。
慌てて、ズボンを脱ぎ火を消す。なんとか消火には成功したが、ズボンには大きな穴が開いてしまっていた。
長居してもしょうがないので、俺は再び部屋に帰還した。
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