169: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/01(水) 13:10:46.66 ID:/dcHJZ9Q0
度重なる失敗に俺がめげることなどなかった。
うまくいかないなら、うまくいくまでやるだけだ。
と、水差しから直に燃料を補給しようとするも当に空になっていた。
いったい今日一日で何往復したかであろう、宿屋の階段を降りていく。
「おいおいおいおい兄ちゃんよ。あんたの魔法ってのは、失敗するたびに臭くなるのかい?」
主人に言われて、自身の袖を嗅いでみる。
腐った卵のような臭い。いわゆる硫黄臭いというやつだ。
「悪いが、酒を追加でくれないか?」
「あのなぁ兄ちゃん。何があったかは知らねえが、酒に逃げるのはあまり褒められたことじゃあねえぜ」
「ありがとう。でも逃げてるんじゃないんだ、追いかけるために酒が必要なんだ」
主人は「ぬぅ」と喉の奥から声を出し、諦めたのか再び酒を持ってきてくれた。
「今日は、もうこれぐらいにしておけよ」
「あぁ」
俺は、再び階段を上っていく。
背後から「なんで尻に穴が開いてんだ」
そう呟く宿屋の主人の声が聞こえてきた。
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