遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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167:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/01(水) 13:09:52.18 ID:/dcHJZ9Q0


俺は、出された食事を手早く腹に収め、再び宿屋の主人に声をかけた。


「あの酒をもう一杯くれ」


宿屋の主人は、機嫌よさげに「やっと俺の酒の味がわかる客が来た」と呟きながら店の奥へと消えていった。
誤解を生んではいるが……あえて否定することもないだろう。旨いか否かは、問題ではないのだから。
戻ってきた主人の右手には、水差しが握られている。中身は、推測するまでもなくあの酒なのだろう。


「このご時世だ、飲むなら自分の部屋で頼むよ」


礼を言い、俺は二階の自室へと足を向けた。
扉を固く閉じ、大きく息を吸い込む。なにせ一人で千鳥足テレポートを使うのは初めてだ。
遊び人の前では嘯いて見せたが、何事も初めてというのは恐ろしいものだ。

俺は、謎の酒を一息で飲み込んだ。
強い眩暈が起こり、足元がふらつく。胃が、「こんなものを流し込むな」と拒絶反応をおこしている。
昨日のカクテルに比べて、なんて飲みにくい酒だろうか。
だが出来の悪い酒のおかげか、酔いは一気に回った。
魔力を全身に巡らせ、呪文を唱える。


「千鳥足テレポート!」


足元に浮かび上がった魔法陣から光が放たれ、そのあまりの眩しさから視界を奪われる。
次の瞬間、俺は謎の浮遊感に襲われた。

慌てて目を開けると、どういうことだ、足元にはあるはずの地面がなかった。
足元を無意味にバタつかせてみるも、俺は重力に抗うだけの力はもっていなかったようだ。

ひゅー。
どぼーん。

俺の落ちた先は、水の中だった。しょっぱい水が、衝撃で鼻から入ってきた。
どうやらここは、どこかの海らしい。俺の鼻先を、魚たちが優雅に泳いでいく。
慌てて、水面へと浮上して周りを見渡す。見上げれば空が、見下ろせれば海が、俺の周囲に一面の青を形成していた。

やたらと、腰に付けた剣がやたらと重く感じられる。
それなりの旅装備のまま水の中に沈んだのだから、そりゃあそうだろう。


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