157: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/04/07(日) 14:14:08.91 ID:NdD66LHM0
ほんのジャブ程度の質問のつもりだった。俺の努力を顧みない彼女に対してのほんの意趣返しだったのだ。
本当のところは、彼女が魔王を追っている理由などどうでもいい。
ただ、彼女がひた隠しにする目的を露わにせんとすることで少しでも彼女が嫌がる姿が見たかったのだ。
だが、俺は俺自身のことをよくは理解できていなかったらしい。
そのたった一つの質問を皮切りに、堰をきったように俺の中に溜め込まれていた疑問、いや欲望というべきものがあふれ出したのだ。
「君は、元騎士だと言っていたが何処の騎士団だ」
「なぜ、遊び人なんてやっているんだ」
「年はいくつなんだ」
「どこの出身」
今の俺には、彼女の返答を待つことすらできなかった。
こんなこと、本当なら初めて出会った夜に、初めて背中を任せられる仲間に出会たあの夜に聞いておくべきだったのだ。
だが、下心をさらしたくない一心がそれを妨げた。それでも、俺は聞くべきだった。
共有する時間が増えるにつれ、彼女のことを知らぬまま彼女への思いが募った結果がこれだ。
「一人の時は何して過ごしているんだ」
「俺のことをどう思っている」
「なぜ魔物にやさしくする」
「この店にはしょっちゅう来ているのか?」
……
…
彼女は黙ってそれを聞き続けた。
答える隙などなかったのだから、仕方あるまい。
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