145: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/03/27(水) 20:21:47.06 ID:DIeGWH8y0
「私は、普通のマティーニがいいな」
「かしこまりました」
「そういえば、この店はどこにあるんだ?」
ふと浮かんだ疑問を遊び人にぶつけてみる。
「知らない」
「知らないってことは無いだろう。君はよくこの店に来るんだろう?」
「マスターに聞いてみたら」
なるほど、遊び人の言うとおりだった。
マスターを伺うと、忙しそうに遊び人のマティーニを作っている。
「残念ですが場所はお教えできません」
おやおや?なぜ店の場所を隠す必要があるのだろうか。
カクテルのあまりのおいしさに酔い沈んでいた勇者的直観がひょっこりと顔を出してくる。
いや、もちろん禁酒法下にある現在おおっぴらに営業することはできないのだろう。
故に、場所を明らかにしないというのは、まあわかる。
しかし、なぜ既に店にたどり着きカクテルを味わっている俺や遊び人にすら場所を隠すのだろうか。
その徹底的な秘匿主義に、マスターが魔王そっくりの男であることも加えて急に危機感が沸いて来た。
何をやっているのだ俺は、ついうっかりカクテルのうまさに流されていたぞ。
ここのところそればかりだ。
酒がらみになると、すぐに油断してしまう。
そもそもの話、ここは酒場なのだ。
ならば、酒の卸元である魔王一味とも何らかの関りがあるはずではないか。
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