123: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/02/19(火) 20:01:49.87 ID:YlZ38RDP0
「どうした、何が気に食わないんだ?」
「おじさん、ここの宿屋にある中で一番強いお酒を頂戴」
店主が困った表情で告げる。
「おいおい、こんな所で喧嘩は止めてくれよ。それにうちは真っ当な宿屋なんだ酒なんてあるわけないだろう」
彼からすれば、俺たちのやり取りは単なる痴話げんかに見えているのであろう。
遊び人が店主をにらみつけると、店主はたいした酒は置いてねえぞと呟きながらいそいそと店の奥へと引っ込んだ。
「おい、店主に八つ当たりすることは無いだろう」
「早く、荷物を置いてきてよ」
言葉を荒げているわけではない。
むしろ、とても静かで落ち着いたトーンであるがしかし。そこには一切の反論を許さない遊び人の強い意志がこもっていた。
かつて幼き日に母がヒステリーを起こした時をふと思い出す。
こういう時の女には逆らってはいけない、それは火に油を注ぐような愚かな行為である。
俺、いそいそと彼女の荷物を背負い宿屋の主人から告げられた二階の部屋へと上がった。
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