117: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/02/19(火) 19:58:32.92 ID:YlZ38RDP0
「遊び人、離れろ!」
叫ぶと同時に俺は体当たりで、遊び人を吹き飛ばす。
つい数瞬前まで彼女の首があったところを、炎の刃が通り過ぎた。
「あ、ありがとう、勇者」
彼女の言葉には答えず、炎魔将軍の攻撃に備えて抜刀する。
しかし、黒き炎の影は既に消え去っていた。
「怪我はないか?」
彼女の顔を見た瞬間、俺の血が沸騰した。
右頬に一筋の黒い線。間に合わなかったのだ、黒き炎の刃は確実に彼女の右頬を切り裂いていた。
頬の傷からは血が流れていない。炎の刃故なのだろう。
切り裂かれたと同時に炎に焼かれ血が止まっているのだ。
彼女の顔から眼をそらす。彼女の事を見ていられない。
怒りが湧いてくる。
「―――いつか必ず報いを受けさせる」
「落ち着いて。勇者」
遊び人が、俺の口元に手を寄せる。
何事かと思えば、彼女は自身の袖口で俺の口を拭った。
どうやら、怒りのあまりに唇を噛んでしまっていたらしい。
俺の血で彼女の袖口を汚してしまっていた。
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