87: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/26(土) 23:47:36.30 ID:k41t6Mgh0
――いい匂いがする。
「……んっ、じゃあたしはここらで失礼するから、それは飲まないようなら捨てちゃっていいよ。じゃーねー、鍵はかけないでいいからねー」
立ち上がり手を振って、返事を待たずに部屋を出る。
通路、こちらに向かってくる人影、右肩にバッグ、左手に買い物袋を下げている。
一直線に駆け寄り、抱き着く。
「きゃっ」と短い声。
ハスハス、くんかくんか、スーハースーハー。
「志希ちゃん?」
「や、奇遇だね夕美ちゃん」
夕美ちゃんの左肩にあごを乗せ、ちらと買い物袋に目を向ける。食料品。
大根、セリ、昆布……おそらく具沢山のお粥、周子ちゃんのごはんを作るのだろう。
「周子ちゃんのお見舞い行ってたんだね。でもレッスンさぼっちゃだめだよ」
「にゃはは、ごめんごめん」
夕美ちゃんの指があたしの髪を梳く。あたたかさと頭皮に伝わる心地よい感触に、眠気がよみがえる。
「……志希ちゃん、寝不足?」
顔も見えてないのに、なんでわかるんだろう?
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