82: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/26(土) 23:39:04.17 ID:k41t6Mgh0
部屋の主、塩見周子ちゃん。片手でドアを抑えながら困惑の表情をする。
寝癖、部屋着、裸足で玄関のスニーカーを踏んでいる。
「やっほ、上がっていいかにゃ?」
「ん? うーん……んー」
やや充血した目、おそらく寝起き、若干痩せた印象、かすかに肌荒れ。
懸念、『伝染してしまうのではないか』という不安。
「あたしはだいじょうぶだから」
「どんな根拠で……ま、いいか。どうぞ」
声は平静。鼻詰まりなし、喉荒れなし、呼吸器官の症状なし――あるいは軽微。
「おじゃましまーす」
周子ちゃんに続き室内へ。奥の部屋へ向かいながらキッチンを確認。最近使用された形跡なし。匂いなし。
寝室に通され、部屋を見回す。空のペットボトル、脱いだままの衣服、散らかし気味。
椅子に座るよう促され、従う。周子ちゃんがベッドに腰をおろす。気怠そうな雰囲気、立っているのが辛かった様子、仄かに紅潮した頬、微熱。
「志希ちゃん、今日オフなん?」
「あ、そういえばレッスンがあったような」
バッグを探り、スマートフォンを取り出す。画面を点灯、6件の不在着信、見なかったことに。
「悪い子だねー」
苦笑する周子ちゃん。呆れ含み、特に問題とは思っていない。
しばし沈黙。なにか言おうか言うまいか迷っている気配。逡巡ののち、口を開く。
「……ごめんねー、ライブ出れなくて」
軽い調子、擬態。罪悪感が香る。
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