81: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/26(土) 23:37:46.85 ID:k41t6Mgh0
07
調合した顆粒をカプセルに詰め、ビンに落とす。何度かそれを繰り返し、カプセルがなくなったところで大きく伸びをし、こりをほぐそうと首を振る。
締め切ったカーテンの隙間から差し込む光を視界にとらえ、とっくに日が昇っていたことを知る。時計を確認、午前10時36分。夜間に始めた作業が時間を忘れさせていたらしい。
強い疲労感と眠気を感じる。服を脱ぎ、バスルームへ。シャワーに打たれて眠気を払い、バスタオルで乱雑に体をぬぐう。
ドライヤーで髪を乾かしながら部屋の中を物色。衣類の山、洗濯は済んでいるが畳まれていない。髪の水気が飛びきったことを確認し、スイッチを切る。適当に拾った下着とキャミソール、ショートパンツを身に着け、椅子に引っかけたままにしていたカーディガンをはおる。カプセル入りのビンをバッグに放り込み、外へ。
眩しさに目が痛み、バッグから取り出したサングラスをかけた。
大通りでタクシーを捕まえ、目的地の住所を告げる。バックミラー越しに好奇の視線。
「346プロダクションですか?」と運転手。
肯定の返事を返す。『世間話でもしてみたい』というような欲求が鼻に届く。そしらぬ顔で窓の外に目を向け、無言のまま流れる景色をぼんやりと眺める。
到着、電子マネーで料金を支払い、車を降りる。
事務所の正面入り口前から少し引き返す。隣接した女子寮に入り、サングラスを外す。
1階ロビー。見知った顔がこちらを見て小さく首をかしげる。『キミがなぜここに?』ウインクをひとつ送り、通り過ぎる。エレベータに乗り込み、目的の階へ。
ドアの前に立ち、ぴんぽんとチャイムを鳴らす。しばし待ち、ドアが内側から開かれる。
「……志希ちゃん?」
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