白菊ほたる『災いの子』
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75: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 18:02:57.38 ID:XzeV2oVA0
   *

 ひとりになったレッスン室でしばらく自主レッスンをこなして、私はいつものようにプロデューサーさんに声をかけに行った。

「プロデューサーさん、私そろそろ上がりますので」

「お疲れさま。今日はいつもより少し早めだな、疲れ溜まってるのか?」

「いえ、その、明日は…………で、でーと、なので、それに備えてというか……」

 軽い悪戯心が芽生えて、私はそんなことを口走ってしまう。

「ああ、なんだデートか……」

 プロデューサーさんが、カタカタとキーボードを叩きながらそっけなくつぶやく。
 この人があわてるとは思っていなかったけど、予想以上に反応が軽くて少しがっかりした。

「では、お先に失礼しま――」

「デート!!!」

 突然プロデューサーさんが叫び、ガタンと椅子を倒して立ち上がる。
 びっくりしすぎて腰が抜けそうになった。

「それはマズい! たしかにお前はまだこれっぽっちも売れていないし、スキャンダル狙ってる週刊誌もいないだろうけど、それは駄目だ!!」

 さすがに少しむっとした。事実ではあっても、『これっぽっちも』は、いくらなんでもひどい。

「相手は誰だ、学校の同級生か!? まさか業界関係者じゃないよな!?」

「知りません」

 私はプロデューサーさんに背を向けて、駆け足で部屋を出て行った。


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