白菊ほたる『災いの子』
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61: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:38:34.29 ID:XzeV2oVA0
 レッスン開始まではまだ少し時間がある。私は気になっていたことをふたりに訊いてみることにした。

「あの……どうして、私が選ばれたんですか?」

「どうしてって?」

 夕美さんが首をかしげる。

「えっと、蘭子さんや飛鳥さんや、他にもすごい人はいるのに……」

「ほたるちゃんがいちばん点数高かったからね」

「点数?」

「あれ、これ言っちゃいけないんだったかな?」

「もう終わったからヘーキじゃないかにゃ?」と志希さん。

「そうだよね」

 夕美さんがうなずいて私に向き直る。

「こないだのオーディションは審査員で共通の評価シート使ってるんだ。音程とかリズムとか、けっこう事細かな項目があって、それぞれに点数をつけるの。それでみんなの採点を合算して、最高得点になったのがほたるちゃんだったってこと」

「評価シート……ですか」

「印象だけで判断すると、どうしても私情が入っちゃうからね。それは審査としてよくないよねって」

「でも、飛鳥さんは『あのふたりは身びいきはしない』って言ってましたけど……審査の前に」

 夕美さんがちらりと志希さんに目を向ける。

「んー、そう言ってもらえるのは嬉しいけどね、そういうのは、しようと思ってするものじゃなくて勝手になるものなのだよ」

 志希さんが言った。

「無意識、深層心理、アンコンシャス・バイアス。偏見は誰でも必ず持っている。好意的なものも含めてね。『自分は公正だー』なんて思ってしまうのがいちばんいけない。あたしも夕美ちゃんも、346のアイドル全員と同じだけ関わってなんていないから、偏見は発生するよ。身びいきってのはつまり、身近な子のパフォーマンスはよく見えてしまうということで、それは自分では気づけないんだよね。かといって、自分とあの子は仲がいいから好意的に見ているはずなので、ある程度マイナス評価しようってのもひどい話でしょ。偏見の効果がどのくらいなのかわからないのに」


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