60: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:36:31.01 ID:XzeV2oVA0
06.
社内オーディションの2日後、ライブに向けて何回か予定されている合同レッスンの最初の日を迎えた。夕美さんと志希さんとはオーディション以来、初めて顔を合わせることになる。
指定された時刻より10分ほど早くレッスン室に入ると、すでに夕美さんがそこにいた。薄緑色の半袖Tシャツを着ていて、下はレッスン用のジャージを穿いている。
こちらに目を向けた夕美さんが、ぱっと顔を輝かせて手を振った。
「ほたるちゃんおはよう、ライブがんばろうねっ!」
「はい、よろしくお願いします」
私が頭を下げたところに、「あっ」という夕美さんの声が届き、なんだろう? と顔を上げる。
夕美さんが私を見ていた。違う。夕美さんの視線は、私よりも更に後方に注がれていた。
ふいに背中に重みが加わり、私は思わず短い悲鳴を上げた。
「ハスハス、くんかくんか、……ふむふむ、ほうほう?」
首をひねって目を向けると、志希さんが後ろから私の首筋に顔をうずめていた。
「もう、志希ちゃん、あんまりほたるちゃんおどかしちゃダメだよ」と夕美さんが言う。
志希さんは、ぴょんと跳ねるように私から離れ、あごに手を当てて目を閉じた。
「……無香料のボディソープにトニックシャンプー。外資系の、特に高くも珍しくもないやつ――だけど、これは!」
「これは?」と夕美さんが繰り返す。
「夕美ちゃんたいへん! ほたるちゃんはなんと、周子ちゃんとそっくり同じお風呂用品を使っているよ、これの意味するところは!」
「寮だからね」
「にゃるほど」
志希さんは納得したようにうなずき、私に向けて片手を上げた。
「よろしくね、ほたるちゃん」
「は、はい……よろしくお願いします」
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